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第9話

「さっき黄金の薬、飲んだよね? 今回は『卵が元に戻りますように』ってお願いだったからよかったけど、使い方によってはものすごく危険なものになり得るんだ。それはわかるよね?」 「は、はい……」 「うちの研究所にはね、そういう発明品がいっぱいあるんだ。だから、半端な覚悟の人間は仲間にはできない。本当に博士と一緒に何かを発明したいなら、お父さんと決別するくらいの覚悟がないと」 「…………」  視線を落とし、俯いてしまう純。  子供相手に大人げないとは思ったが、研究所の仲間になりたいのならこれくらいの『脅し』は必要だ。  夢野博士の研究所は、『関係者以外立ち入り禁止』の聖域である。普通の人には見せられない発明品がたくさんある。博士は助手を欲しがっているけれど、博士の人間性についていける人でなければ、『ラボメン』にすることはできないのだ。 「……でも」  すると純は、呟くように言った。 「もしぼくがいなくなったら、お父さん、今度こそ一人になっちゃうかと……」 「え?」 「両親が離婚する時……実はお母さんは、もう別の男性と再婚することが決まっていたんです。お母さんには新しい家族ができるのに、お父さんだけ独りぼっちになっちゃうなんて可哀想だと思って……。だからぼく、お父さんについて行くことにしたんです」 「…………」 「だけど、最近なんだかよくわからなくなっちゃって……。お父さんはぼくのこと、本当に必要だと思ってくれてるのどうか……」  その台詞を聞いて、直人は一瞬ドキッとした。自分も身に覚えがないではなかったからだ。  チラリと夢野博士を盗み見たら、彼はさも退屈そうにこんなことを言い出した。 「まだるっこしいことやってるね。だったら直接お父さんに気持ちを確かめてみればいいじゃないか」 「……簡単に言いますけどね、博士。そんなの一体どうやって確かめるんですか」 「心配ご無用! 私に任せておきなさい」  余計に心配になるんですけど……と心の中で突っ込む。  その時、純が歩いていた足を止めた。

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