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第12話
「ああ、そうですよね。大事な息子さんをいただくんですから、それに見合う対価を支払うのは当然です」
夢野博士は何を思ったのか、にこりと微笑んで再び鞄を漁り始めた。
一体どうするつもりなのかと、直人は博士に目をやった。
「でも、現金よりもっといいものがありますよ」
博士が例の薬が入った試験管を取り出す。
当然のことながら、父親は怪訝な顔になった。
「なんだ、それは」
「願い事が叶う薬です。これを飲んで……そうですね、例えば『家の中にあるもの全てを金に変えてください』と願ってみてください。必ずその通りになりますから」
「ふん、何言ってやがる。てめえ、頭がおかしいのか?」
「とんでもない。なんなら、ここで実証してみせましょうか?」
そう言って夢野博士は純の買い物袋から卵をひとつ取り出し、薬を飲んで、それを純金に変えてみせた。金色の卵が博士の手の上で輝いている。
「こちらは差し上げます」
博士が父親の手に純金の卵を落とす。ズシリとした重さが伝わったらしく、父親は一気に目の色を変えた。
「うおっ、マジで本物だ……」
「おわかりになりましたか?」
「なるほどな。こいつぁ気に入ったぜ」
「それは何よりです」
博士が新しい試験管を差し出すと、父親はそれをひったくって顎をしゃくった。
「ならそいつはくれてやる。後は好きにしていいぞ」
「ありがとうございます。では連れて帰らせていただきますね」
夢野博士は意味深に微笑むと、純の背を押して言った。
「さ、行こうか。純くん?」
「は……はい……」
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