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第2話
譲が帰って、なんて心にもないことを言うから内心怖かった。正直そんなこと言われるだなんて思っていなかったから.......嫌いに、なったのかと。
でも声は震えてて目は潤んでて必死に視線を合わせないようにしてるところを見ると、ああ嘘をついているんだなって見抜けた。
嘘をついてる理由は分からないが、とにかく譲の確執を取らなければ連れてはいけない。
「朔に迎えに来きてほしい.........、けど...だめ!帰って!!!」
......連れて行けない、のだが。了解を得る前に抱きかかえてしまった。帰れ帰れの連呼を「今更いうな」と一刀両断して走った。徐々に榊田の人間が増えてきたこともあり焦っていたのもある。
久しぶりに抱えた譲はとても軽くなっていた。首や手首も細くなっていて―痛々しい痕が付いていた。シャツで見づらいが青紫色の、コードかビニール紐か...絞められた痕。絞殺、されかけたのか、ただ単に絞められただけなのか。どちらにしても......許さない。
車に乗り込んでも暴れる譲にキスをすると、押しのけられた。俺の方がむっとするはずなのに、それ以上に譲は罪悪感を味わって傷ついた顔をした。
「ごめんなさい...ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
「譲...?」
異常までに怯えだした譲に疑問が湧く。さっきから譲が俺に触られることを嫌がっているように見えるのはなぜだ?恥ずかしがっているだけならこんな怯えたりしないはずだ。あの人たちになにかを吹き込まれた...?
しかし、これだけ泣かれてしまうと聞き出すのは無理そうだ。先に宥めた方がいい。
「譲、いきなりキスしてごめんな?びっくりしたな」
「...い、やじゃ、なかった」
「そっか」
とりあえず嫌いなった訳では無いことはわかった。少しずつ泣き止んできた譲の頭を撫でる。触った途端びくっと肩を揺らしたのはこの際気にしないでおこう。
「ちょっと......じっとしてろ」
頭から首筋へ渡り、制服のシャツの第1ボタンを外す。その手を掴みいやいやと左右に頭を振るが自分も首を振ってだめだと伝える。
隠そうとする手を制し襟を引っ張った。
しっかりと手形、紐の痕が付いていて、よく見れば爪で引っ掻かれた痕も付いている。
「譲......首、どうした?絞められた?」
「見ないで...」
痛かった、だろ?と聞く。譲は無言で涙を拭った。
「他は?」
ひとつ見られて観念したらしく、譲は両手首をおれに突き出してきた。そこにも青紫色の痣がくっきりついている。ボタンを外してやれば縛られたであろう痕が付いていた。
「......お、れ...」
「無理に話すな。辛いんだろ?」
必死になって話そうとするが、言葉に詰まっている。まだ傷が癒えてないのに無理に話す必要は無い。
いつの間にか車は減速していて、桜花についていた。
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