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第10話

side 朔 譲は一気に話し終わると止まらない涙を拭う。 顔も知らない、慎也という奴を殴りたい衝動に駆られた。落ち着くためにふぅと息を出してみるが.........っこれが落ち着いてられるか。 無理をいうな。大事な恋人寝取られたんだぞ、落ち着けっていう方が無茶だ。それも一週間食事抜きの水だけ生活?これが躾の一環だ?いい加減にしろ。あの██野郎絶対許さない。 慎也とかいう奴もだ。「朔さん」って言ってるくらいだから俺の存在は知っていたんだろう。なのに別れるような方向に持っていくなんてタチが悪いにも程がある。それに譲の精神が崩れるようにわざと言葉攻めをするところがまた意地の悪い奴なんだと物語っている。一番ムカつくところは譲についた手首の縛ったこの痛々しい痕を「愛し合った跡」と言ったところだ。譲は酷く嫌だっただろうに、それを愛し合った跡と言われるのは非常に腹が立つ。 あと、あの人のことだ。食事抜きの件もだが最後に首を絞める必要なんてどこにあったんだ。下手したら死んでいたかもしれないのに言った言葉はどうだ、「どうしてわたしばっかりこんな目に遭わなきゃいけないの」だと?そのままそっくり返してやる。俺が息子ってだけでここまでの仕打ちを受けるんだ。縁を切ったなら二度と関わらなければよかったのに、自分から蛆虫のごとく這い寄ってきて「どうしてこんな目に」はないだろうが。 「...ふぅ」 パンクしそうな量のムカつきをぐっと堪えて息を吐く。その吐き出した息をため息と勘違いしたらしい譲は、ソファーの端の方まで寄ってしまった。 「......ごめんなさい」 「譲?」 「す、捨てな...いで」 「...」 あまりに呆けてしまって口を開いて固まる。譲は、無言=別れようか(捨てようか)迷っていると勘違いして絶望したような顔をした。 「め、迷惑...なら、榊田に帰ります...」 「それはだめだ!」 「ひっ」 「榊田には返さない」 譲の「帰る」が気になる。榊田は家じゃないだろ、ここが家だ。 「でも、おれ...汚れて...」 「汚れてない」 話している途中でもずっと泣いていたのに、枯れてしまいそうなほど譲はまだ泣いている。 「譲、おいで」 おいでと言いながら腕を引っ張り腕の中に閉じ込めた。もう車の中の時のように拒否されることはなかった。ただ、震えてる。 「朔は...おれのこと、嫌いになったりしないの?なんで...?」 「なんでって......そんな当たり前な事聞くか?」 「あたりまえ...」 「譲を愛してるからだ。さすがに慎也って奴に腹は立つが......譲のせいじゃないからな」 「............こう」 震えてるはとうに止まっていて、譲はすり...と擦り寄ってきた。 「甘えたいのか?」 「うん...」 少し強ばっている体を撫でる。譲が汚いなんてことありえないんだから。

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