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第12話
「まぁ冗談はさておき」
体が離される。もっと、とは言えなかった。ってか冗談...?目が本気だった気がするけど。
「怪我してるとこ手当するから」
手を引かれてソファーに座らされる。大人しく座っとけってことらしい。
下に何も履いてないから、座る時、ソファーが冷たくて飛び上がった。それを見てくすくす笑う朔を睨(ね)めつける。
「ねぇ、ズボン」
「足も手当するから」
「捲ればいいじゃん」
「.........」
戸棚から救急箱を持つと、くるっと振り返って「...捲っていいのか?」とかエロい声で聞いてくる。身の危険を感じてすぐさま遠慮しますと断った。
「じゃ、まず指、見せて」
足元に跪き、足を手当するんだと思ったらまさかの指。それなら、縛られた方の手首じゃないの?
「指?手首じゃなくて?」
「指。ほら」
まるで犬に「お手」させるように手を差し出され、自分のをそこにのせる。
「譲はストレスとか溜まると、指とか爪とか噛む癖があるからな」
言われて指を見たら、大変なことになってた。手首の傷が酷かったから気にしてなかったけど、爪は深爪になってて指には噛み跡が沢山ついてた。
「痛々しいな。この癖直さないと...」
いままでなにも感じなかった。そりゃ癖だから、気づかない間にやっちゃうんだろうけど。気にし始めると、チクチクと痛み出す。
朔はその指に綺麗に絆創膏を貼っていってくれた。
指の手当が終わると、次は手首の手当に取り掛かった。
朔の苦々しい顔に胸が痛くなる。睡眠薬を飲まされたからといって、抱かれたという事実が変わるわけじゃない。
もっとしっかり用心してればこんなことにはならなかったのにと後悔する。
朔だって傷ついて...、と手首から朔に目を移すと...笑っていた。
「え、ひゃんっ」
べろんと舌で傷を舐められてあられもない声を上げる。
「ちょっ、ちょっ?!」
「ん?消毒してるだけだけど?」
意地悪そうな笑顔。なにかされるのは明白だ。口から舌がぺろりと出される。
「こ、朔?ちょっと、やめ...っ」
もう一回舐められそうになってぎゅっと目を閉じた。
なにも、来ない。
「なにもしないから、落ち着け」
「へ」
間抜けな、声。手首にさっと消毒液がかけられ包帯が巻かれる。すごく手馴れてるなーって場違いなこと考えてた。
「次は足な」
片足が太腿に乗せられまた包帯が巻かれていく。
しないんだ...して欲しい、わけじゃなかったけど、やめちゃうんだ。胸がひどく苦しくなってまた目を閉じた。
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