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第20話

和やかな雰囲気に身を任せていたが、1つ確認するべきことを思い出す。 「百合子さん、どこへやったんですか?」 「え、百合子さんどっかいったの?」 ことのあらましを知らない譲は目を白黒とさせ、頭の上に?マークを浮かべている。 奈緒に百合子さんのことを調べてくれ、と言ったところ「行方不明ね」と調査書を渡された。どうやら譲が榊田に行ったあといなくなったらしい。つまり、電話をしたあとだ。 「ああ...海外へ飛ばした」 「と、とば...」 隣の恋人が青ざめる。可愛い。これくらい榊田では当然なのに。 「その前からフェイントかけてましたよね?」 「ああ。あやつ、わざわざ自分のSPにやらせたようだからな。自分で手を下さないのも腹立たしいが、なにより、それを金で解決したのが気に入らない」 「それよりも、父さん傷つけられて怒ったんじゃな「そんなことはない」…い、んですか...」 空に離散していく疑問。譲は困り顔で俺を見る。肩をくすめた。 「家族総出で飛ばしたんですか?」 「もちろんだ。あれだけのワガママ娘に育てた罪は重い」 家族総出、か。一体どこの国に島流しされたんだろう。下手したら二度と戻ってこれないかもな。少し可哀想だと思うが、自業自得だとも思う。 「...さて。そろそろ老体にも限界がある、帰るとするか」 "父さん"が立ち上がる。それと共に俺と譲もソファーから立った。 「見送りはよい」 「じゃあ玄関先まで」 「それを見送りと言うんじゃ」 否応なしに玄関先まで見送りさせられた"父さん"は下駄を履いた。いつもながら、下駄を履いてるくせになぜカラコロと音が出ないのが不思議だ。 「突然来て悪かったな」 ......なぜだろう、この人に謝られるとぞわと鳥肌立つんだが。そんな俺の微妙な感覚を感じ取ったらしく、ムッとされた。 「弁解したかった訳じゃないが、まぁこれも言い訳だ。ただ、金輪際関わらないとだけ言いに来た」 「...はい」 改めて言われると寂しいような。昔に言われた時と変わったのは、年齢もそうだが考え方の方が大きいだろう。 譲がいてくれたから、この人とちゃんと話すことが出来たんだ。もし、譲がいなければ話を聞くことなく追い返していた。 「譲。今まですまなかった」 腰を45度、いや、ほぼ直角に曲げ譲に向き直る。 「儂らがしてきたことは許されることでない」 「あ、あの」 「今後は沙恵もしっかり管理しておく」 「は、い」 「だが...」 腰を元に戻した"父さん"がにやりと俺を見て笑う。なんだ、嫌な予感がする。 「このバカに愛想が尽きたらいつでも来なさい。匿ってやろう」 頬に微笑を浮かべる、狸爺。さっきまで関わらないと言ったのはなんだったんだ。見ろ、譲が固まっている。 「さっさと帰ってください」 「もちろん。目の前でいちゃつかれては休めるものも休めん」 ドアを開け颯爽と去っていく父親に、ああやっぱりバレてたかと驚くこともしない。 「と、父さん?ばれ、バレてる!いいの?」 慌てふためく譲の頭に手を乗せる。 「『金輪際』関わらないらしいからな。いいんじゃないか?」 「あ......そうだね」 そうだねと納得しておきながらまだ首を捻っている。

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