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第4話
帰り、何とか落ち着かせたおれはコンビニでマンションやアパートの雑誌を何冊か買い込んだ。
高校1年生。親の援助なしではきっと一人暮らしなんて。ましてや親の承諾なしでは出来ない。
分かってるけど、これ以上苦しい思いをするくらいなら、いっその事…家出でもしてしまおうか、なんて。
家に帰ってみるが、父さんは出掛けたままのようだ。
丁度いい。
家にパソコンは一台しかなく、それも父さんの部屋にだ。父さんが居ない今なら借りることが出来る。
…話をすると、どうしても動揺してしまうから。
「…おじゃまします…」
父さんは居ないけど、なんとなく後ろめたくて声を掛けた。
あった、とノートパソコンを開くとパスワードの入力画面になった。
パ、パスワード…?
首を傾げる。父さんがつけそうなパスワードなんて分からない。父さんなら適当に付けてそうだけど。例えば、名前を自分の名前をローマ字にしてる…とか?
「官乃木 朔…カンノギ コウ…けー、えー、えぬ、…」
打ってみるが、「間違っています」と出る。
何度適当に名前を入れ替えてみても、間違っていますと出る。
「名前と誕生日とか?」
カタカタと適当に混ぜたり、違うものにしてみたりするもののノートパソコンは間違っていますの一点張り。
「誕生日…」
ふと思い浮かんだ誕生日を入力してみる。
これがあっていたら、さすがに…。
「1225」
これはおれの誕生日だ。
「ん、間違ってる」
やはり間違っているようで、ノートパソコンは開かれない。
そういえば父さんの誕生日がおれと一緒なんだったと思い出す。それなら、自分の誕生日をパスワードにしてしまうことになるし、分かりやすくなってしまうからしないだろう。
…なんで父さんの誕生日と一緒なんだろう、今はそれすらが残酷に思えてくる。
はぁ、とため息をついて買ってきた本を袋から取り出そうとする。仕方ない、こっちで探すしか…
―?ない。
「あっ」
そうだ、リビングに置いてきていたんだ。
パソコンを開いてから、既に30分以上経っている。下手をすれば父さんが帰ってきててもおかしくない時間帯になっていた。
慌ててノートパソコンの前の椅子から立ち上がると。
「違う、こうだ」
「へ、」
後ろから声をかけられ、固まるが、もう1度強く肩を押さえつけられ椅子に戻される。
背中からぬっと出てきた手がパスワードをパソコンに入力する。
打ち込まれたのは、12.25
おれの、誕生日。父さんの誕生日でもあるけど。ああ、点が抜けてただけなんだな、なんて腑抜けたことを思った。
それよりも。
「父、さん」
振り返った先にいたのは、おれの買ってきた数冊の本を持ち怒りの表情をした父さんだった。
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