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第10話
夜中に起きたら足腰立たなくて。ふらふらしながらも歩いていた所を、父さんにベッドにまた押し倒された。
「動きがすごいな…ふっ」
「わらうなぁ!」
嗄 れた声を精一杯出して反抗する。
反抗した、はずなんだけど。結局、また失神するまで食べられた。
「ばかぁ…」
横になりながら抱き抱えてくる父に文句を言う。身体は疲れ果てていて、動く気力すらない。それに、その、孔のほうが…ヒリヒリする。
父さんのせいだ―!
「その声ですら誘ってるようにしか感じるのは不思議だな」
「やっ、もうむりぃ…」
はっとして身体を離す。今度こそ動けなくなる覚悟がある。
「さすがにしないから、な?」
信用出来ない、と睨みつければまた余裕そうに笑う。
―くそっ、かっこいいし!
「明日、学校行けない…バカ」
このだるさとかは、絶対明日に響く。
「うん、学校に連絡しておく…って、明日始業式じゃないのか?」
「最悪、責任とれ!」
よく考えてみれば、今は春休み。だけど、明日から一学期、つまり2年生だ。
さすがにそれには、休めない。
「まぁ…大丈夫、だろ。送っていってやるから」
むくれるおれに、父さんはそっと頭にキスをする。こういう、恥ずいところ、どうにかなんないかな。
「…うん」
「譲、もう一回言って?」
「なに、を?」
父さんの顔を見上げる。
「俺のこと、どう思ってるって?」
なぜ、今、それを…。
抱かれる前に言ったことを掘り出されて赤くなる。
「言わなきゃ、だめ?」
あえて可愛い感じに言ってみる。父さんは一瞬たじろぎ、視線をふっとどこかへやってからだめ、と言ってきた。
「うぅ…」
「ほら」
「…す、すき」
促されて言うと、聞こえないと言われた。意地悪。
「好きだって言ってんだ!」
「俺も好きだよ、譲」
余裕綽綽 と答えらる。どうしよう、顔が熱を持っている。熱でもあるのだろうか、恋熱とか…恋病なんて病気にでもなってしまったのだろうか。
「んっ」
そっと口付けをされ、うっとり唇を見る。
「そんな顔してると、襲うぞ?」
「…いい、けど」
「……………箍 が、外れそうだ」
***
なんとか始業式に出席したものの、辛い。腰が、とにかく立たなくて…。
「くそ、あのエロ親父…」
毒づいてみるが、最後のあれは自分から誘ったのだ。おれが悪い。
始業式が終わると、とりあえず教室で待機だと言われ、不満が飛び交う。おれだって早く帰って、父さんの腕の中に飛び込みた…乙女かよ?!
「はぁ」
ため息を大きくついて椅子に、そっっっっ…と座る。下手に座ると、次立てなくなる。
「初めまして。今年から新しく教師になった―」
去年とは違う担任が自己紹介を始める。
欠伸を噛み殺しながら聞いていると、後ろから声をかけられた。
「?」
振り返って、驚いた。こんな男いるんだなって。黒髪に、白い肌、赤い唇と頬。まるで白雪姫だ。
出席番号が自分の後ろでなければ、多分女子だと思っていた。
「えっと…何?」
担任にバレないよう、小声で話しかけると、絆創膏を渡された。
「え」
「クビんとこ…キスマーク」
相手はトントン、とおれの首にあるであろうキスマークを自分の首でつついて教えてくれる。
あ、あいつ!
すぐさま首を隠し、絆創膏を有難く頂く。
「ありがとう」
「うん…気をつけて」
こくり、と頷く。あとで、名簿を見て教えてくれた相手の名前をかくにんした。
名前も、まるで姫のようだった。
小野山 雪姫、って言うらしい。
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