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第11話
帰ってきて早々に父に抱きついた。
「ただいまっ」
「おかえり。急に甘えん坊になったな」
とか何とか言ってくるくせに、頬が緩んでるから面白い。嫌じゃないみたいで、安心する。
そのまま胸のなかでじっとしているとため息が零れ出た。
「どうした?」
「んん…なんでもない…安心するなぁって」
「そうか」
髪を撫でてくれる動作が優しくて気持ちがいい。さらにすりすりと頬ずりしてみると笑っているのか振動が伝わってきた。
「父さん…好き」
何となく言ってみたら、こらと怒られる。
「父さん、じゃないだろ。朔だろ」
「よ…呼ばなきゃだめなの?」
またうるうるした目で見てみるも、だめの一点張り。
「じゃあ、譲。もう一回だ」
「無理、恥ずい」
逃げてやろうと思って体を後ろに退かそうとすると、一旦は離れれたものの顔をあげた途端にキスをされまた胸にダイブしてしまう。
「ばか」
何でだろう、ばかの響きが甘い。
「ほら、譲。言って?」
自分が思ってるより耳が弱いみたいで、囁かれる度に体が火照る。
「朔…大好き」
目をじっと見てから、下手くそなりのキスを返した。
「可愛い」
どこが?今のキスのどこが可愛いかったんだ?
「譲、愛してる」
朔も目を見て言ってくれて嬉しくなる。
少し前までは、諦めなきゃってと思ってたのに。まさか両思いだなんて思考えてもみなかった。今すごくしあわせだ。
好き、好き、大好き。
この感情は、多分これからずっとあふれで続けるけるんだろう。
それでもいい、きっと朔がそれを受け止めてくれるだろうから。
-fin
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