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第2話
なにと怪訝そうに言われた。瞳が不安げに揺れていて、悪い話じゃない、と言う。
「片思い歴、長いって言ったよな」
「え、うん」
「いつからか。具体的に言うと、譲が中学1年生の頃からだ」
「…なんで?!」
振り返る譲を床に押し倒す。
「ちょっ、ずるい!」
腕の中で暴れ回るから首元に唇を寄せて舐める。
「あっ…」
可愛い声を出して大人しくなった譲に微笑んで話を続ける。
「正確には譲が夢精したとき」
譲は、ころころと表情が変わる。今は青ざめたようで赤い。
「むせ…っ?!なんの話してんだっ」
「あの時のこと、覚えてる?」
「……………おぼえて…ない」
譲は俯き、何も喋らなくなった。この反応でおぼえてない、なんてあるわけがない。
中1のとき、譲が夜中に洗面所にいて。泣きそうな顔をしていて心配になって声を掛けたら「下着にへんなのついてた」と言った。
「白い…へんなの」
「…ああ」
夢精や精通の話をすると、譲は分かってないのか不思議そうな顔。一度やってみれば分かるかと、風呂場に連れていき情事を教え込んだ。別に男同士だから大丈夫だと思っていた。
その時だ、俺が譲を好きになったのは。
「は、ぅ…んっ、なにこれぇ…」
譲のソレは、軽く擦るだけで勃った。涙目で必死に俺にしがみついて、初めての気持ちよさに酔いしれる譲が可愛くて。
「ふぁっ」
もっと強くすれば、喘ぎ声を大きくする。
「あっん…なんか、でるっ!」
「我慢しなくていいから、出していい」
「まっ、やっ…はっ、だ、め---っっ」
あの時、男のくせに白い肌やまだ声変わりしない高い声、蒸気した赤い顔が忘れられなかった。その気持ちが恋だと気づくのにほんの数日。
恋心に気づいて、とりあえず譲の母さんに謝った。譲の母、結花子は譲を産んだすぐあとに亡くなり、せめて結花子の残してくれた譲を愛そうと必死で育てていた。愛してるのは愛してるが、なにか違う愛になってしまった。
「ごめん、結花子…でも、ちゃんと育てるから」
そう、気持ちを伝える気など毛頭無かった。
だけど、譲が好きだと言ってくれて。ああ同じだったんだと思った。
そうして。
「襲ってしまった」
好きになった経緯をつらつらと喋ると、とうとう譲は顔を覆ってしまった。
「もう…喋んないで」
余程恥ずかしいのか、首まで真っ赤だ。
「今更だ」
「そうなんだけど!」
覆ったまま恥ずかしがっている譲が愛おしくて、そっと髪にキスをする。身体を起こすと、太ももの上にわざわざ乗ってきて抱きついてきた。
「不安だった?」
「うん」
「言ってなくてごめんな?」
「…信用できなくて、ごめんなさい」
なんだこの可愛い生き物は。素直すぎる。そろそろと優しく頭を撫でれば、その手に擦り寄ってきてくれた。猫か。
「不安な事あったら言えよ?俺だって不安になるだろ、話してもらえないんだって」
「うん…心配かけてごめんなさい…朔」
素直に謝って名前を呼んでくると、譲は俺の肩に額をこてん、と置いて静かになった。
「譲?」
声を掛けるが、返事が返ってこない。身体を慎重に離してみると寝息をたてて譲は眠っていた。
「…まじか」
よく見ると、どれだけ不安だったのか、目には隈ができていた。
俺も、ちゃんと話してやらないと。
「…ごめんな」
ソファーで寝かせてやろうとすると、譲が離さないとばかりに俺の服を掴んでいた。
「…はぁ」
可愛い可愛い恋人を横抱きにして寝室に連れていく。そのまま自分も横になり、恋人を抱きしめる。
「おやすみ、譲」
ちゅっと頬にキスをして、俺も眠りについた。
ずっとずっと大切にしていきたい、俺の可愛い恋人。
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