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第3話

   「はぁ…もう誰だよいい所なのにー」    面倒くさそうに小野山は玄関に歩いていく。-危機一髪…。ふぅとため息をつくと未だに心臓がバクバクと脈打っている音が聞こえてきた。あんなに強引だなんて知らなかった。知り合って間もないから当然だけど。  少し落ち着いたことで、考えることが出来た。議題は俺と朔の関係について。    「……性的虐待…?」    どうやっても朔が悪い方向に向く。いくら近親相姦が法律上違法でなくても、世間の目がある。あれは合意の上だって言ったって無駄。そういうのを考えても、やっぱり女の人で、同じくらいの年齢の人が良かったのかも。朔だって身内バレなんてしたくないんだろう。  捨てられるのかな。…もしかして、最初からこのつもりだったとか。おれがいつも反抗して鬱陶しかったから、上げて落としてみた…みたいな。    「やだなぁ…」    それだったら悲しすぎる。嘘だったんだと言われたら立ち直れない自信があった。気分が暗くなって床に視線を落とすと、携帯が放置してあった。青いカバーのおれの携帯。家を飛び出した際に唯一持ってきたもの。    そういえば、おれの携帯って―。    「あ、はい。失礼ですがどちら様ですか…?」    ふと、玄関を見る。聞こえてくる小野山の声が怪訝そうだったから。ドアから見える影は大きくて、そう、それはまるで    「あ、ごめんね。譲の父なんだけど…」    「そうなんですか!」    朔、みたいな。え、譲の父親って今言わなかった?バレた?    手を伸ばして携帯を画面を起動させる。やっぱり位置情報、GPSがはたらいていた。入れた記憶は一切ない。というかこれ、外部操作入ってきて、よく分からないアプリが動いていた。開くと、おれの携帯の現在地を示している。…なにこれ、ストーカーかよ。そんなに落胆させたいの?    ***    どうか言わないでくれ!という俺の願いは届きもせず、小野山は気前よく「ああ、今部屋にいますよ」なんて言ってしまった。ああ、この世に神も仏もない。あるのは無慈悲な現実のみ。  部屋に戻ってきた小野山は一言。「あれ彼氏?学校で話聞かせろよなー?」…もう二度と恋愛相談はしないと誓った。    そして、今帰路にて、気まずいこの雰囲気。帰りたくないと駄々を捏ねてみたところ、朔に一睨みで大人しくさせられてしまった。怖い。今から別れ話されるのに、なんでこんな緊張した雰囲気なんだ。    その光景を、近くにいたカップルがただならぬ気配を感じて避けていった。あれが…朔の望む形。    そうなると、もう沈黙すら恐ろしくなって震える声で話かけた。怖がらせないようにしてくれたのか優しい声が降ってくる。逆にそれが怖いと知らずに。    「今日…友達の家泊まる予定なんだけど」    自分でも悪足掻きだと思ってる。でも、少しでも別れ話を先に送りたくて。そしたら地の底から響くような声がして縮上がった。    「却下」    変な声が出た。ひぇっ、かな。ってかどの口が言うんだよ。そっちが元々俺のこと邪魔者みたいにしたくせ、なんでおれが怒られんの?我慢ならなくなって、気づいたら叫んでた。    「も、元はと言えば父さんがっ」    「父さん?」    ―ヒヤリ。    おれが叫んだのに、叫んでない朔の方が怒ってる感じがする。それに、周りの温度が、零度になった。多分じゃなくて本当に冷たい。凍え死ぬ。  朔だろ?と言われて自然と拒否と言葉が口を出た。断られると思ってなかったであろう朔は、固まってしまっている。  拒否したのは、さっきのカップルを見て朔が望むならそれでいいやって思ったから。話も聞かずに勝手に結論づけてしまう自分が本当に嫌になる。    「これからは、父さんって呼ぶから。大丈夫、邪魔しない-」    「譲」    もう一度力強く名前を呼ばれて、歩みを止める。俺の方が早く歩いてたから、朔が早足で近づいてきた。なんでそんな声で呼ぶんだ、もう要らないんじゃないの?  家に帰ってちゃんと話そう、と言われ後ろから優しく抱き締められる。ゆっくり頷いた。暖かい。    「あれ、朔くん?」    そして女の甘ったるい声が後方から聞こえてきた。

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