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第2話

 「譲、百合子さんの件なんだけど、少し…厄介で」    今なら言い出しても大丈夫かと感じ、話してみた。体の関係があったと虚偽されたこと、愛しているから体を捧げたのに無下にされたと言われたこと。  その間譲は何も言わず、ただ耳を傾けているだけで逆に怖かった。    話し終えた後、譲はそっか、とだけ言った。あまりにもあっさりした反応に多少動揺する。    「心配させて、ごめん」    「………ねぇ、朔はおれのこと好き?」    唐突な質問にもちろん大好きだと恥じらいなく答えた。譲からこんなことを訪ねてくるのは珍しい。普段はこういうのがないから少しいじらしいと感じているが、そんな所が可愛くて仕方が無いと想う毎日。    「うんうん、よし。じゃあ、安心して待ってる」    その答えに返ってこっちが驚嘆するってどんな状況だ。    「…ふ、不安にならないのか?」    「朔が浮気できるほど勇気を持ってるとは思えない」    …ごもっとも。今回の浮気騒動でもう懲り懲りだ。こう何度も家出されてはたまったものじゃない。  続け様に譲がそれに!と喋る。    「おれも…その、朔が好き…だから!信頼してます!絶対に浮気しないで帰ってきてください!」    きっと顔を真っ赤にして携帯を握りしめて、携帯越しって分かってるのに身体を動かして叫んでいる。仕事を放り出したいと思ったのはこの時が一番だ。放り出してでも会いに行きたい、触りたい。    「帰るよ、絶対。浮気しない。譲が大切だから。愛してるよ譲…帰ったらまた言うから」    「〜〜っ」    携帯から声にならない悲鳴が上がってブツリとかなり盛大に切られた。苦笑して耳から携帯を離すとメールが届いていた。    『From:譲 TO:官乃木 朔   件名:おれも    おれも愛していませ。』    最後の文字が「いませ」になっていることから、急いだことがよく分かる。これじゃ、「いません」なのか「います」なのか判断出来ない。  家に帰ったらこれで弄ってやろう、と想うと俄然やる気が湧いてきた。    「よっし」    気合を入れるために軽く手で膝を叩き立ち上がる。絶対にこの話を無しにて帰って、譲を安心させたい。その一心で。    fin

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