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第3話
嫌な考えが振り払えない。目の前が真っ暗になる。
「明日、明後日位が山場でしょう」
それを過ぎれば助かる見込みはほぼ─。
その先を聞く気には到底なれず、涙が乾いてパリパリになった顔を宙に向けていた。話が終わると問診室を出て、朔のいる病院をガラス越しに見た。入るのは、許されなかった。面会謝絶らしい。こうやってガラス越しに見るのは面会にならないのか、とかどうでもいいことを考える。
官乃木さんと名前を呼ばれて見ると医者が手術の時着るような服を渡された。少しの間だけ、面会が許可されたらしい。それならばと急いでそれを着込んだ。
治療室に入り朔の元へ。
呼びかけてもやはり起きず、それが信じられなくて何度も呼ぶ。
そのうち、なにがなんだか分からなくなってぺたんと床に座り込んでしまった。座ってしまったことで目の高さに来た手を、点滴のついた手を握りしめる。
「目、覚まして…」
そこでストップしていた涙が再び流れ始めた。早く、起きて。なんで起きないの。
程なくして看護師が時間ですと無慈悲なことを言う。離れることが苦痛で嫌で首を左右に強く振った。
だけどそれは許してもらえず、無理やり腕を引かれて朔から引き剥がされた。
「っやだ!いやだ、離せっ」
腕を振り払おうとしたら羽交い締めされる。耳元で誰かが何かを言っている気がしたけど、頭に入ってこない。どうして朔から離れささせようとするんだ、やめろ、とかしか考えられなくなっていた。
抵抗してたら呼吸が苦しくなった。朔に手を伸ばして必死に抱きつこうとしたけど、そのせいで力がどんどん抜けていく。何故か周りの人が慌て始めて、おれの意識もふらふらと一人でに歩き始めた。
最後の最後に顔を上げたら─治療室の扉はもう閉められていた。
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