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第7話
祖父に引っ張り出され、治療室前の椅子に座らされた。そこには祖母も居た。会いたくないと言ったのに、神様は意地悪だ。
「譲、大丈夫?怪我はしていない?」
気迫迫る演技 に圧倒されつつ言葉を選び大丈夫だと言った。その声は震えていたと思う。けど祖母は気づくことはなかった。
「なら良かったわ…あなた、やりすぎよ。いくら何でも襟首を掴んで引き摺り出すことないじゃない」
「お前は分かっとらんな…あれに触れて譲が落ちぶれたらどうするつもりだ」
ぎゃいぎゃいと叫ぶ二人を他所に、最初に朔の状態を教えてくれた医者が近づいてきた。勇敢な人だ。
健康状態並びに脳、心臓などの各器官はどれも安定しているが依然目を覚ます兆候は見られない。怪我を負わされた時の精神的ショックがあり、脳が目覚めを拒否している可能性もあると言われた。
ならどうすれば起きますかと聞いたら、声を掛け続ける以外方法はないと言われた。体の器官は正常なのに言葉を発することなくただ呼吸をするだけ。そんなの…まるで、植物人間みたいだ。物思いに耽っていると肩を叩かれた。
「譲、戻るぞ」
一悶着あったものの和解したらしい祖父母。きっと病室に戻りたくないと言っても聞き入れてくれないだろう。抵抗してもさっきみたいに引き摺られていくのが落ちだ。
今のところ、人の目もあって攻撃はしてこなさそうだから、また抜け出せばいい。怒鳴られはするが。
嫌々ながらも小さく返事をし立ち上がる。返事をしないと、不本意ながら怒られる。引っ張られた事ですこし拠れた服を直し歩き出した。
***
病室を抜け出した事で、その日一日は監視がついた。如何にもボディーガードといった感じの黒服男が部屋の中に一人、部屋の前に二人。
部屋は昨日のうちに変えられた。一人部屋の、それも角部屋。ほかの階層の角部屋とは違い部屋の内部は大きい。それに比例して窓も大きく、角部屋を取り囲むように明かりを取り入れていた。
ベッドは多分クイーンサイズ。寝心地は抜群だけど慣れない低反発枕で寝れなかったのが事実。つくづく庶民だなと感じた。
「部屋…出たいんですけど」
「外出許可は下りておりません」
次の日、この人の目を欺くのは無理そうだから商談した結果がこれ。何度出たいと言っても外出許可が〜と突っ張られた。
「…トイレは」
「部屋にあります。昨日説明しました」
昨日説明しただろ、一回で分かれ阿呆と遠回しに言われている気がする。むっとする気持ちを抑え未だに眠る恋人の安否を考え始めた矢先、外が騒がしくなった。黒服が揉めているみたいだ。
物凄い勢いで横開きのドアが開いたらドア顔負けの勢いで朔の担当医が入ってきた。黒服が服を引っ張る中、医者が一際大きな声をあげる。
「官乃木さんが目を覚ましましたっ」
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