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第13話
─過去回想
「おとーさん」
疲れてた帰ってきたお父さんに声をかけた。なかなか起きてくれなくて悲しくなる。
何度か揺すっていると、ううと呻いて起きてくれた。寝起きのお父さん、すごくしんどそう。でも、どうしてもお願いを聞いて欲しかった。
「譲…?どうしたんだ?」
「おとーさん、ぼくおかあさんがほしい」
「………………………ぇ」
「きょうね、お外にいったんだ!そしたら」
ちょっと待ちなさい、とお父さんに止められて口を手で塞ぐ。だってお父さんが待ちなさいと言ったら、いい子にするのがお約束だから。
「外に、行ったのか?一人で?」
「ううん、おとなりのさとしくんと一緒!楽しかった!」
お隣の智くんは、ぼくと同い年で、とっても仲良し。
「ああ、ならいいよ」
「さとしくんとお話してたら、さとしくんが、おかあさんいないの、おかしいって。だからぼくもおかあさん欲しい!」
そう言ったらお父さん難しそうな顔をして、静かになっちゃった。どうしたんだろう。
「譲、お父さんじゃ不満か?」
「ふまん……?遊んでくれない事のこと?」
「そうだよなぁ…」
お父さんはため息をついて、ぼくをお膝においでと足を叩いた。すぐにぽすんと座ると後ろからぎゅーと抱っこされた。温かい!
「ごめんな譲…。お父さん、お母さんはあげられない」
え、と固まる。優しいお父さんならお母さんをくれるとすごく期待してたのに。目がうるうるして悲しくなって、どーして?って聞いた。
「どうしてって…………、えっとな、それは…」
「おかーさん、ほしい…。なんでダメなの?」
「な…ダメっていうか。お母さんは買えるものじゃないし」
「買えないの?どうしたら…もら、えるの…ぐす」
「ゆゆゆ、譲?!泣くな、大丈夫だから!な?」
なにが大丈夫なんだろう。だってお母さんはお金で買えないんだもん、どうやったら貰えるのか分からない。どんどん涙が出てきて、止まらなくなった。
「おかーさんがほしぃいっ」
「ごめんな、譲…ごめん」
「やだぁ…おとーさん、きらいー!」
お父さんの腕の中で暴れる。お母さんは温かいんだよって智くんは自慢げだった。智くんにはお母さんもお父さんもいて、ずるいと思った。
「よし譲、寝るぞ」
「やだっ、ひっく…やぁ!おかぁさんがいいぃぃ!」
いくら言ってもお父さんは困った顔をしてごめんねって言うだけで、お母さんをくれない。それどころか「寝なさい」と言われた。泣いて嫌がってもお布団に寝かされて「おとーさん嫌い!」って叫んだ。
「…ごめんな」
その時のお父さんの寂しそうな顔の意味。その頃は全く理解出来なかった。
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