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第17話

 あんまりにもおれが泣くから、朔はそんなに隠したいことなのかと静かに聞いてきた。涙が飛び散るのも気にせず頭を大きく縦に振る。  そしたら朔はそうか、とだけ呟いた。    「なら、聞かない」    朔のそれは多分おれに対する優しさなんだろうけど、おれからしたら突き放されたように感じた。自分勝手な我が儘野郎は片思い相手の純粋な好意すら受け止めることが出来ない、情けないやつだ。  ごめんなさい、ごめんなさいと馬鹿の一つ覚えの如く繰り返す。苦しいのは当たり前、嘘をつくから。二度とおれのことを思い出せないようにしているから。    「…落ち着いたら、リビングに来なさい」    泣きじゃくるおれを置いて朔は部屋を出た。何もかもが違うのだと身に染みる。おれが泣いていたら朔なら抱きしめてくれる、慰めてくれる。だめ、忘れなきゃ、それが一番なんだ。  布団に潜り込んで体を抱きしめる。もう誰もこうしておれを包み込んではくれないのだろう。まだ昼間だけど、今日はもう寝てしまおうと、目を瞑る。    朔─否、父さんとの確執も、祖父母の恐怖からさえも逃げるようにおれは夢の中に逃げ出した。

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