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第3話
「どうだった?」
父さんに連絡を入れたら、「だめ」と素っ気なくメールが返ってきた。携帯を雪姫に見せると雪姫も驚いたのか目を瞬かせている。
「理由は?」
「…今聞いてる」
メールの着信音が鳴り雪姫が携帯を渡してくる。
─高校生が泊まりなんて、だめに決まっている
過保護かよ!と叫んだ。確かに子供扱いはしないで欲しいと言った。言ったけど、こんな扱い方をしろとは言ってない。胸に靄を抱え眉を寄せていたら電話がかかってきた。
「へぁっ?!」
びっくりして携帯を取り落とした。下に落ちた携帯を見ると、父さんと出ていた。昨日まで朔だったけど、やめた。
雪姫が拾い机の上に置く。それも、おれに名前を見せつけるかのようにゆっくり目の前にスライドしてきた。
「出ろよ」
「や、やだ」
出ないと二度と家に来させないと言われしぶしぶ携帯を手に取る。そんなことにされたら、今度こそ行き場が無くなってしまう。それだけは避けたかった。
『泊まるって?ダメに決まっているだろ』
いきなり要件から始まった論争。もしもしすら言わせてくれなかった。
「なんで、おれもう高校生だけど?」
『それがどうしたんだ?父さんが高校生の頃は門限があったぞ』
…めんどくさい。あれ、父さんってこんなだっけ。それとも高校生扱い拗らせてる感じなのだろうか。
「…どうしても?」
『逆に聞くが、どうして泊まりたいんだ?……父さんと顔を合わせるのが嫌だとかは受け付けない』
ひくり、と喉がひくつく。癇が良すぎて寒気がした。正にその通りです、あなたと顔も合わせたくないので家をでます─なんて家出をする妻じゃあるまいし、口が裂けても言えない。
「あ…そういう訳じゃなくて、ただ単に泊まらないかって誘われただけ。嘘じゃないから、本当に。友達がゲームしようって」
『…何のゲームだ?』
「ゲ、ゲームの名前?」
どうしてここで、父さんの知らないゲームだからと言い返さなかったのか。
「あ、…」
『ほらみろ』
勝ち誇ったような声が、なんとなく懐かしく感じた。同時に昨日のことも思い出して、懐かしさは腹立たしさに早変わりした。
「もういい、勝手に泊まるから。なんで父さんの了承得ないといけなんだよ。朝だっておれが怒られるみたいな雰囲気だったし」
『それは、父さんも悪かったと思って─』
「もういいって言ってるだろ!じゃあ今日泊まるから!」
電話をぶち切る。我ながら馬鹿だと思う。高校生だから泊まるな、じゃなくて、恋人として泊まるなって言われたいとか考えてしまったからだ。それに、今朝のことはもうそれ程怒ってはいない。過去をほじくり返して楽しいのかよ、と自己嫌悪になった。
「了承は?得てないよな?」
再び机に突っ伏したおれの髪を弄りながら聞かれる。
「得たから行く」
「……あー、そう?それじゃ、一緒に帰ろうね、譲ちゃん」
状況を察してくれたらしい。でも、譲ちゃんはやめろ!
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