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第7話

   テーブルを壊す勢いで叩いたら先生が肩を跳ね上がらせた。雪姫が絡み酒が始まったと小声で言う。    「先生、聞いてください!」    「お、おお?」    「父さん、おれのこと忘れたんです!酷くないですか?!おれのことだけ綺麗さっぱり!」    「と、父さん…?全くもって話の脈絡が取れないんだが」    「理人に言ってなかったっけ?譲の恋人って譲の父親の事だよ」    「は?!そういや官乃木のお父さん、階段から落ちたから見舞い行ったな…忘れられてたけど」    忘れられてた、という単語を聞いてまた涙がだばっと溢れ出た。    「理人、譲にそれ禁句」    「まじかよ…。どこまでいった感じだ?」    「…ぐす、一通りは…っ、やった」    二人が同時にオウム返しのように「一通りはやった…」を繰り返した。そうして何を思い浮かべたのか二人揃ってニヤけた。    「譲くんは、一通りナニしたのかな?」    「なに…?」    「ナニってのは、あれだよ、あれ」    「あれ…?」    分からなくて首を傾げると、先生が答え合わせ、と言って耳打ちしてきた言葉に赤面した。ナニって、そういう意味…。ってかそれを詳しく聞こうとするな。    「で、一通りナニしたんだ?」    鼻水を啜り、雪姫に意地悪いと鼻声で言った。    「まぁまぁそう言わずに。鬱憤晴らすならそこまで話したらスッキリするんじゃない?」    スッキリするもなにも、ひたすらに恥ずかしいだけだろ。  この二人、似たもの同士だ。人が恥ずかしがるのを見て笑うなんて意地が悪いにも程がある。  きっと暴露するまで聞かれるだろうから言ってしまおうと口を開いた。    「だから…その、穴にアレ突っ込んで」    「どの穴?アレって?」    「うぇ…?穴…、どの?」    質問の意味が理解出来なくなり舌っ足らずになってきた。なんか体が揺れている気がするし、視界も朧気でよく見えない。不思議になって目を擦るけど治らない。    雪姫が何か言ってる気がしたけど、おれの意識は落ちていった。        目が覚めたら床に寝ていて、体には毛布が掛けられていた。体を起こして昨日の記憶が徐々に蘇る事に、顔が赤くなるのが感じられる。  泣き叫びながら父さんの愚痴を吐き、雪姫と先生に絡んだ挙句寝落ち。不甲斐ない…。でも二人がおれをいじるのが悪いしと開き直った。    辺りを見渡すと、雪姫はテーブルの近くで……、先生と抱き合って寝ていた。二日酔いであろう頭痛に邪魔されながらも、四つん這いになって様子を見に行く。  先生より小さい雪姫は、抱き抱えられるように寝ていて…本当に白雪姫のようだった。その表情から昨日の意地悪さは全く見られない。  鞄の中に入った携帯をカメラモードにし、数枚写真を撮る。後で写真を送ってやろうと思いながら。

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