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父さん、迎えに来て 1

 全部話すと約束したのはこれ以上隠すことなど出来ないと確信したからだ。  我慢すると言ったくせに意気地無しだと心で罵る。父さんの事を思ってしてた事が逆に苦しめてたとなると…もう訳が分からない。  だから、もしもの可能性にかけてみることにした。今日の様子を見てて、そこまで錯乱することは無いんじゃないかと思った。    その思考も、長くは続かない。なぜなら…場所が悪いから。    寒くなってきたのか、さっさと着替えた父さんは、あろう事かおれをソファーに連れてきて足の間に座らせたのだ。加えて後ろから腕を腹に回され動けなくされた。    今すぐにでも離れたいのだが、身動きが取れず何も話さず既に数分が経過している。…正しくは、おれが恥ずかしくて喋れないだけだ。    「と、父さん…あの」    そんな急接近されても困るんですが。そう言おうとして振り返ったら、顔が、あって、近くて、    「うわぁぁ?!」    叫ぶ。  何でこんな甘ったるい恋人みたいな雰囲気になってんだ、いや恋人だけど…そうじゃなくて。嬉しくないのかって聞かれればもちろん嬉しいけど!そうじゃなくて!    「ち、ちち、ちかい!近いってば!」    近いと言ってるのにも関わらず、父さんはニヤケ顔で近づいてくる。完全に遊ばれている。  さらに近づけられ縮こまると、何をされるでもなく額を乗せられた。    「ごめん、譲…。まだ、混乱してて線引きが分からない。嫌なら嫌って言ってくれ」    ため息とともに吐き出されるのは戸惑い。    「記憶の中では好きだと知っているのに、頭がついて行かないんだ」    「無理しなくて、いいって」    「大丈夫、無理してない」    ぐりぐりと額を肩に押し付けられその暖かさの心地良さに目を瞑る。お陰で話す勇気が出来た。    「まず、謝ります……色々隠しててごめんなさい。  最初は、父さんの治療費の事で揺すられてた。遠まわしに弁護士にも手を回しているから無駄だって言われた気がする。  それで、今日は車でたまたま会って、考えたけど、お金はどうにかするから榊田には行けないってて言おうとしたら。雪姫の事…あ、雪姫先生と付き合ってて…その事バラすぞってのと、父さんの会社なんて簡単に潰せるぞって…。脅迫、されて。あっちは、「取引」だって。  もう訳わかんなくなって、榊田に行きますって、言っちゃっ、て…でも、誰にも、言えなく、てっ」    喋ってる途中で不安が押し寄せて嗚咽と涙が溢れ出る。両手で拭いそれでも止まらない。そんなおれを、父さんが頭ごと抱き抱えた。    「よく、頑張ったな」    髪を撫でられればもう涙を止める気もなくなり、大声を上げて泣いてしまっていた。    

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