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第6話
そうだ、とも違う、とも言えずにいると「榊田が怖いか?」と聞かれる。
「君の服には、盗聴器など付いてない。せいぜい携帯にGPSが付いているくらいだ。安心して話なさい」
「で、も」
「茂雄はそこまでしないだろうな。寧ろ、そういうことをするのは...」
その先を続けなかったのは言わなくてもおれが分かると思ったからだろう。
「祖母、ですか...」
「君も、沙恵-君の祖母に会っているなら分かるはずだ、彼女は-異常だ」
こうもはっきり言い切って本当に大丈夫だろうか、と怖くなる。常に祖母に見張られてる気がしてしまうのはここ最近の事があるからだ。
家にいる時、驚いた事に自室に監視カメラが付いたいた。
「茂雄も昔はああではなかった。沙恵と結婚してからだよ」
過去を慈しむかのように、桜花理事長が遠くに目を向ける。その目には何も写っておらず、遠い目はすぐに俺の方に向き直った。
「譲くんは、朔くんの出生の話を知っているのかい?」
「な、何も...」
「そうか。朔くんも、あまり話したくないのだろうね」
出生の話?あまり話したくない?何も聞かされていないことに不満よりも変に動悸が上がっていく。知りたい、けど、話したくないのなら聞かない方がいいのかもしれない。
「父さん、は今事故で記憶が曖昧になっていて。多分、昔の事は覚えていると思うんですけど...」
「なんだって」
恐る恐る朔の現状を口に出せば、不安そうな顔になる。この人は、朔とどういう関係の人だ?
「ああ、そういえば言ってなかったね。わたしは、朔くんが高校生だった時の担任だ」
疑問が顔に出てしまっていたみたいだ。
「高校の...」
「そうだよ。それで、朔くんは無事なのか?」
本気で心配する顔にこの人は大丈夫だと安堵しあったことをすべて話した。
話し終え、ここまで来てなんだが、結局朔を突き落とした犯人は誰なのだろうか考える。
「階段から...か。証拠か何かは残っていたのかい?」
「証拠って...あ!」
おれの出した大声で桜花理事長をびっくりさせてしまった。そんなことより、
「あの、思い出したんですけど、階段から突き落とされた筈なのに警察の人誰も来ていませんでした!」
そう、病院に一度も警察官が事情を聞きに来たことは無かった。疑問に感じなかったのが今は不思議で仕方がない。
「それは、榊田のせいかもしれないな。裏で動いてる可能性がある」
「そ、んな事...」
「榊田は、そういうモノ だ」
事件をもみ消すことも可能だと?本当に朔は、おれが家に帰れる得策なんて考えれるんだろうかと怖くなってきた。
「わたしの方でも、少し動いてみる事にする」
「そんなことして...大丈夫、なんですか?」
「もしかして、榊田に消されるかもと思っているのかな?大丈夫だよ、沙恵ですらわたしに手は出せない」
それはどういう意味ですかと問いただす前に、理事長はおれに笑顔を向けた。この話はこれで終わりだということなのだと理解する。
「さて。せっかくこの学校を見に来たのだから君のクラスに案内しよう」
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