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第7話
クラスに案内すると言われたものの...数分経った。どんだけ遠いんだよ?!
「まだですか...?」
エレベーターで一階まで降りて、左右に伸びる長い廊下を左へ。突き当たりを右へ曲がり、左側の階段を上ってさらにまっすぐーー。
延々と歩き続けているにも関わらず、クラスには届かない。
「もうそろそろ着くからね」
前に聞きました、それ。慣れない制服のせいか歩くのが余計に辛く感じる。この学校の制服は、白を基調としていて、赤色が袖、首の襟を枠取っている。紐タイプのリボンも赤色で、出かける前に祖父に結んでもらった。自分で結べないなど情けないとご丁寧に罵り付きで。
「着いた、ここが君の新しいクラスだ」
やっとの事で辿り着いた教室。白い引き戸には小窓があり、先程見た教員が教壇に立っていた。担任だったらしい。
「わたしはここまでだ、あとは頑張りなさい」
「え?え?」
肩に手をぽんと置き、ニコニコ笑っている。
今日は見学だけだと言っていたはずなのにクラスで紹介されることになっているのは、この際目を瞑ろう。...別に、入らなくてもいいんじゃないか?このまま帰っても...。
「転校生か、入って来なさい」
だめだった。小窓から見られていた。
深呼吸をし、戸に手をかける。緊張することない、すぐにこのクラスとも分かれることになる。朔が迎えにきてくれるはず。
とは思っていても...体はガチゴチだ。
「大丈夫、いってきなさい」
そっと背中を押された事で勇気を貰い、戸を開けた。視線が一気におれに集まり、それは奇異なものを見るような目で.....
...あれ、先生しかいない。
「明日から本登校で今日はみんな休みだぞ?どうかしたか?」
ガックリと肩を落とし後ろの理事長を睨みつけた。おれの、ドキドキ返せー!
「理事長、説明されてなかったのですか...いたずらが過ぎますよ」
「いやぁ、譲くんがびくびくして可愛いものだから、つい」
「ついって、あなたの年じゃ可愛げも何もあったものじゃない」
ポンポンと交わされる会話。担任の先生は見た目から理系だと簡単に分かる。理事長は先生の嫌味に意に介さない感じで喋り続けていた。
「だって、可愛いものを愛でるのは理事長の特権なはずだ!」
「.....榊田 譲君だね?明日からきみの担任を勤める、神霜 蓮 だ。よろしく」
会話を強制的に辞めた先生が教壇を降りて握手を求める。
素直に手を差し出せば、腕を引かれ顔を近づけられた。あ、イケメン。
「?!」
違うだろ自分。朔の方がイケメンだろ、ってそうでもなくて。
「ち、ち、近い!」
そうだよ、近いんだよ。離れたくて一歩後に足を引いたら腕を上に引っ張り上げられ腰を抱かれる。まるでダンスのよう。
「...へぇ」
じっとおれを見て、何かに感心したみたいに笑う。
「朔より、結花子似だな。でも、雰囲気はあいつに似てる。本当に息子なんだなぁ...あ、娘っぽいかもしれな」
ぶつくさと呟く言葉に驚く。朔を知っているんだ。
「...あいつの息子じゃなかったら、襲ってるのになぁ」
さらに驚く。
「おそ、っ、襲わないでっ!」
「冗談だって。でも気をつけて、いつ襲われてもおかしくないからね。きみ、可愛いから」
「な、何言って?!」
さわさわと尻を撫でられぞわぁと鳥肌が立つ。セクハラ行為で訴えてやりたい!
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