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父さん、迎えに来て 第11話
Side 朔
昼間は驚いた。まさか、蓮が桜花にいるなんて。
結花子との結婚に出てくれて、ありがたいと思って数日後、音信不通になった。何か事件にあったのかもしれないと何度も電話したが一切連絡は取れなかった。
後日、桜花先生から「蓮くんなら、海外へ行ったけど...?」と聞かされた。あの野郎、帰ってきたら殴ってやると思ったのは言うまでもない。
今日の再開は全く予想だにしないものだった。日本に帰ってきたという話も聞いていなければ、教師になったとも聞いていない。挙句、教員免許を取っていたことすら知らなかった。
今度対面で会う時は本気で殴ると心に誓ったのだった。...譲に触れ事を含めて、だ。
そんなこんなでいつも譲に電話をかける時間になった。だが、先にメールが来てそれに答える。蓮が担任なのは不幸なのか、幸なのか。あいつの節操なしは高校の時から変わっていないようだから、近づくなと言っておいたが、来たメールには担任だから難しいと書かれていた。
どうせなら話しかけても無視して欲しいところだが...さすがに無理か。
悩んだ結果、口頭での注意でしか出来ないなと結論づけた。
昼間話したのに凝りもせず履歴から譲の番号を探し出しかける。
何でこんなに声が聴きたくなるのかは、微かに残る記憶がそうさせているからだ。早く記憶が戻れば譲だって安心出来るものを、俺の記憶は頑固らしく譲の事を好きになった中一の頃から一つも進展はしていない。
好きだとは思っているのに、頭のどこかで違うと囁く声も聞こえてくるのだ。どっちが正しいかは、譲の言動を見ていればわかるのだが。
『...朔、?』
電話にでた譲は、何故か息が荒かった。
『どうし、た...の』
「蓮の事でって思ったんだが、譲こそどうしたんだ?息が上がってるみたいだが」
『ん、ちょっと...ふ...』
なんなんだ、その色っぽい声は。突っ込んだ方がいいのか迷う。聞いて欲しくなさそうな雰囲気だが、もしかしたら体調が悪いの可能性だってある。
「大丈夫か?体調でもー」
『大丈夫だから、気にしないで』
「なにも隠してないだろうな?」
『っ...』
隠し続けてたことが後ろめたいのか、譲が息を呑む。
なにかを言おうとして口がぱくぱくする音と息を吸う音。数回それは繰り返されやっと譲の息は言葉になった。
『お...同じ、男なら......察してくれると、ありがたい......』
...は?
「なにしてたんだ、勃ってるなんて」
『言葉にするな!』
大声を出すから、耳から携帯を離すがキーンと頭の中で鳴る。
本気でそう思っただけなのだが、言葉に出すのは...それは、だめだろうな。反省しよう。
『お、おお、おれだって、こんなになるだなんて思ってなかったんだ!だってなんとなぁく思い浮かべただけだったのに、こんな...っ!ばーか!!』
なんで、俺が罵られるんだ。
「早く抜けばいいだろ?」
『...出来ない、監視カメラ付いてて恥ずい』
今サラッと流したが、監視カメラだと?徹底的に監視するつもりか。
風呂は?と聞いたが動けないと泣き言を言う。なんでそんなことになっているんだと問いたいところだが、譲が拒否してきそうだからやめた。
近くにいてくれれば、どうにか出来るのに。
『え、それはやだ』
声を出して言っていたことに気づくのに時間がかかった。...ってか、やだって言ったか?
「やだって、どういう意味だ」
『え、え、あ。別に父さんに触られたくないわけじゃ、ない』
むしろ触られたいと聞こえたのは一体...?
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