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第12話
部屋の備え付けのユニットバスにすら動いていけないのがもどかしい。
音声録音機能まで付いていない監視カメラのおかけで通話の内容は聞かれていないものの、流石に一人でシてる所まで見られるのは嫌だ。
何とか横を向いて擦れている部分から床を引離す。
どれもこれも、朔のせいだ...!
「電話、切っていい...?ツラいんだけど」
『...どうにかできるのか、それ』
ぐっと言葉に詰まる。動けないし、触れない、どうにも出来ない万事休すな状況だ。
「鎮めるために違う事を考える」
『例えば』
なんでそんなグイグイ来るんだ。そんな事知らなくてもいいのに。
違う事...と考えて、思いついたことを一つ一つ口に出してみる。
「朔の怪我の容態...朔の記憶...朔の今後の生活...朔の」
『もういい』
まだあるのに、と不満を言えば自分自身を不安にさせるような事を考えるなとお叱りを受けた。
「毎回言うが、怪我はそこまで酷くない。入院してた時にほとんど治った。記憶は徐々に戻ってきているし、今後の生活に関して、譲はそこまで気にするな!』
「...じゃあどうすればいいんだよ」
まとめて解消されてしまった、もう為す術もない。
無言になってしまった相手に苛立ちを感じた始めた時、発された言葉に目を見開く結果になる。
「なんて、いった、いま」
『テレフォンセックスって、わかるか?』
てれふぉん、せっくす。
「っ、なに言ってんだよ!!」
携帯を放り投げるかと思ったがなんとか耐え忍んだ。
それの意味くらいはわかる、わかるけど!なんでここでそんな卑猥な言葉が出てくるんだ。それこそ、自分で触らないとできないだろ!
「そ、そん、そんな事っ」
『譲は聞いているだけでいい。目の前に俺がいるとおもって、な?視姦されてると思え』
「そんな事ーっ」
出来るわけないだろ。聞いてるだけでイケるなんてありえない。そんな色んな言葉を飲み込んだ。朔が咎めるようにおれの名前を呼んだから。
『カメラから背を向けなさい』
唸りながら振り向き、カメラのある方向を確認して背を向けた。
『ティッシュ、下着の中に詰めて』
多分ズボンを汚さないためだろうけど、抵抗があってティッシュを手に持ったまま固まる。
『汚れてもいいのか?』
...良くない。嫌々ながらもあまり動かないようにしながら制服のチャックを開け下着の間からティッシュを当てる。ここまで来たなら、抜くことくらい自分で出来るのに、手が動かない。
『......譲』
甘く呼ばれて、ふっと息を吐く。きっともう、嫌だって言葉は聞き入れて貰えないだろうから大人しく従う。
『触るからな』
目の前にいるはずのない朔が、妖艶に笑った。
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