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第15話
「榊田さんは、いーっぱい悪いことしてるわね〜.....」
動き出した車の中、菜緒は横目で俺を見る。その目に非難はない。
「ごめん、調べるの面倒だった?」
「もう〜、死ぬかと思ったわ!部下が一人ボコられて帰ってくるんだもの!」
「...ごめん」
榊田の裏は真っ黒だ。探ろうとすれば逆に腹を抉られかねない。ー死んだという話も聞いたことがある。
「部下は生きてるから気にしないで?超ごついんだからそうそう死にはしないわ」
その朝ごつい部下たちの頂点 の菜緒は一体何者なのか。寒気を感じ窓の外に視線を移す。いつの間にやら車は街を離れ山奥に進んでいた。どこへ行くつもりなのだろう。
「久しぶりでしょ?わたしの仕事場に来るの」
「......待て」
事務所に、連れていくつもりなのか。
「ちょ、っと待て!」
「あはははは!車に乗ったが運の尽き!大人しく連行されなさい」
「おろ、し、」
「さぁ飛ばすわよーー!!!」
ぐんと車が加速する。周りの木々が高速で流れていった。菜緒の事務所には超ごつい部下、そして超ごついオネエが大量に集まっている。むかし、なにも知らないで連れていかれ大変な目に遭い、それ以来一切事務所に寄り付かなくなったというのに。今日はどうやら厄日らしい。
「ひっ、」
目の前に対向車のトラックが見えた。菜緒の運転は荒く、いつも死にそうな思いをしているが...本気で、死ぬかもしれないと思った。
「...?」
高級車に乗り込む前に、朔の声...叫び声が聞こえた気がして振り返る。
「どうかしたの?早く乗りなさい」
「は、はい」
背中を祖母に押され仕方なく乗った。朔が近くにいるはずなんて無い。朔は家にいて、昨日は電話したけど傍にはいなかっ、た、から.........。
「〜っ!」
体が熱くなる。昨日は、恥ずかしさのあまり電話を切ってしまった。電話をかけてきたが、無視。メールも、無視。最後には電話禁止令を出してやった。電話禁止令なんか出して我慢出来ないのはどっちだろうな、返ってきたときには「うるさい!」と口に出してしまったほど、恥ずかしかった。
声で、イクとか。
「譲?顔が赤いけど...熱でもあるのかしら」
祖父の代わりについてきた祖母がおれの額に触る。熱などない、ただ恥ずかしいだけ。
「な、なんでもないです。大丈夫です」
「あらそう?」
ぱっと避け前を向いた。朔と電話してることを悟られてはいけないから、表情筋鍛えなきゃ。
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