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第19話
side 慎也
「......ほんとにその相手のこと好きなんだね」
不満げな顔で言ってみたら照れながら俯いてしまった譲くん。可愛い、なのに...彼氏持ち。ま、彼氏って言ってないけど肯定してるようなもんだし、と自己完結する。
さっきから神霜せんせのことは「兄さん」って言ってるけど、家では普通に「蓮」って呼んでる。キモくない?17歳にもなった弟が「兄さん」とか言って慕ってくるの。僕は無理!生理的に無理!譲くんにいいように見てもらえるようにするためだ。
「じゃあ浮気しよう!」
「............」
彼氏がいるんだったら意識をこっちに向ければいいんだ!これだと思って提案したらすっごい睨まれた。
「だめかぁ...」
「おれ、彼氏...じゃなくて恋人いるって言った」
「もう彼氏って認めちゃいなよ。偏見ないから」
偏見、という言葉に譲くんはちょっと肩を揺らし僕から身を引いた。どうやら、少なからず嫌な思い出あるみたいだ。
「その人ってどんな人?兄さんや僕よりいい人?」
蓮がこの勝負を提案してくれて本当に良かったと思ってる。僕はどちからというとタチのほうで、可愛い子とか綺麗な子が大好きだ。そういう子とセフレの関係で楽しく過ごしてきた。
けど最近飽きてきて...どうしようか考えてたところへ、蓮からの話。正直、昨日は乗り気じゃなかった。だって...蓮の美的感覚ってたまにズレてるし。
でも、でも、だ!!今日会って確信した!譲くんは僕の運命の人だって!可愛くてツンデレの匂いがプンプンしてて、もうそりゃどストライク!
「えっ、と...そ、れは」
「先輩?後輩?同級生?大学生とか?それとももっと年上?あ、もしかして枯れ専?...まぁ無いと思うけど、ショタ系?」
「ぅ、うぇ?」
何言ってんだこいつって感じで口篭る譲くんにさらに畳み掛ける。
「やっぱり譲くんってネコだよね?」
「ね、猫?」
「受けのこと!抱かれてるよね、彼氏さんに!」
「う、受けっ、だかれっ...っ」
「顔真っ赤〜、可愛いなぁ」
どんどん赤くなる譲くんが可愛くてもっといじめたくなる。好きな子はいじめたくなるっていう、あれだ。
「どっちにしても...遠距離恋愛だよね?大丈夫?浮気とかさぁ...」
「っ、そ、それは......」
譲くんの表情に一瞬翳りが見えた。お、いまの効いた?と心の中で微笑む。もしかしたら、前歴があるのかもしれない。揺さぶってみよっと。
「譲くんの彼氏なんだし、イケメンだよね?大丈夫?」
「だ、いじょ...ぶ...こ、朔は大丈夫だって言って、た」
焦り始めた譲くんの口から「コウ」って名前がこぼれ落ちた。へえ、コウさんって名前なんだ。それだけ聞けただけでもう大満足!蓮に報告できるし〜。条件は同じにしておいた方が燃える!
「その「コウ」さんと連絡取り合ってるの?」
「取ってる...」
「ふむふむ。それってもしかして夜だけ?」
「なんで分かって...」
「だってあの榊田でしょ?昼間はすることいっぱいで夜しかないかなぁって。あ、そう考えると身内系になるのかな?外に出る機会とかなさそーだし!」
流石に怒るかな?ふふとにやけて俯く譲くんを下から覗き込んだら
「...あ」
顔面蒼白の涙ボロボロ。
いくらなんでも、やりすぎちゃった?!?!
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