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第22話
1時間目を寝て過ごし、2時間目から出ようとしたら保健の先生に止められた。流石にこれ以上休むとやばいからと出ていこうとしたら、泣きつかれてしまった。
もしその後体調が悪くなって倒れるようなことがあったらわたしの今後の生活に関わるの!とのこと。
「じゃ、じゃあ...いつまで休めば」
「もういっそのこと早退しても構わないのよ」
それ遠回しに帰れって言ってますよね...。榊田だからこその特別待遇にムカムカする。あれ榊田じゃないし。
「...3時間目まで寝てます。そこからなら授業受けてもいいですよね」
まぁそれなら、と保健の先生は渋々承諾した。
「譲.........い」
名前、呼ばれてる。でも起きたくないから...待って。
「譲......うよ?」
譲って呼ぶのは...祖母と、祖父と...雪姫と...朔。
呼んでくれるのが朔だったら嬉しいのに...。
「譲く〜ん...」
"くん"...?なんでその呼び方...
「やだ...」
「ん?」
譲がいい、譲って呼んでほしい。
「じゃあ...譲。起きないと襲うぞ」
パチッと目が開いた。朔の、声じゃなかったから。
「っ、?!」
目の前に慎也の顔。下手に動けば唇が触れてしまいそうなー
「ん?!」
って触れてる!!!!
全部の運動神経を使って勢いよく起き上がるとごちんっっていう超痛そうな音と倒れる音が響いた。
「ったい!譲、頭突きは酷いよ〜...」
「寝てる間に襲う奴がいうな!!」
おれさっきなに言ってた?!「譲がいい、譲って呼んでほしい」って...無意識のうちにおれはなんてことを!
「だって...譲に謝りに来たら寝てて、思わず...出来心だったんだよ。あ、下心はあるけど!」
あるのか、救いようのない変態だ。
どうやら慎也は本気で謝りに来たらしい。神霜先生に邪魔されながらも辿り着いた保健室でおれ(慎也曰く眠れる森の美女)を見つけて王子様のキスで目を覚ましてあげなきゃと思いキスをした(慎也曰く出来心)。
「変態...?」
「なんで?!」
ベッド脇の椅子に座った慎也にため息をつく。なんでそんな発想になるんだ。
「いま何時間目?」
この話はやめようと話題を逸らす。
「もう4時間目だよ。次はお昼ご飯...あれ譲、なんでそんな顔してるの?怖いよ」
こんな顔してる理由?決まってるだろ、保健の先生に3時間目に起こしてくれって言ったのに起こしてくれなかったからだよ。
初日から休んでそれが祖父母にバレたとすれば...。
「......お昼ご飯、食べる」
いいやもう。怒られても今更だ。
「譲はお弁当?学食?」
「お金渡されてる...けど、あの...呼び捨てやめて?」
気になって仕方がないんだ。譲、譲って何度も。朔に呼ばれたら嬉しいけど、それはちょっと...。
「恋人だけに呼ばれたい派なんだ?可愛い〜」
「うるっさい!」
今度は頭突きじゃなくてグーパンで殴ってやろうかと握りしめた。
「それに寝惚けて「譲がいい...♡」って言ってたじゃん」
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