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第23話

要らないことを言った慎也を睨めつけて黙らせ、どこかへいった保健の先生に届かぬ礼をして保健室を出た。 食堂で人気というオムライスを食べた。 「榊田くん大丈夫だったの?!」 「あ...うん」 「譲くんって、オムライス好きなんだね」 「ま、まぁ...好き」 「なぁ榊田っていままでどんな国行ったことあるの?」 「......」 だが食べるどころでは無くなったのが現実で。慎也とおれが埋もれてしまうくらいクラスメイトが寄って集って必死で仲良くなろうと付いてくるからだ。 「...ゆずくん、ちょっと」 「ゆずくん?!」 横に座ってる慎也に肩を引き寄せられた。 『全員と仲良くする必要はないよ、大体が君の家柄を気にして取り入ろうとしてるだけだからね』 耳打ちされた内容はこうだった。 体が離れてああ、だから友人リストを読まされたのかと思い出す。ある程度読んだもののそれはほとんど頭に残っていない。 家に帰ったらもう一度読もう、そう決意して慎也の言葉に頷いた。 「...で、ゆずくんってなに?」 「あ、それ聞く?呼び捨てはダメ、でもくんだと遠く感じる。だったらあだ名+くんだったら丁度いいよね!って」 「...」 騒がしい昼食を終え、やっと初めての授業を受けた。教科は数学と国語。国語は得意な古典だったため集中できて、一日が終わった。 慎也は神霜先生に用事があるからと職員室に行ってしまい帰りは騒がしいクラスメイトと共に学校を出るハメになった。 延々と繰り返される「仲良くしよう」発言に返すのもいい加減うんざりしている。 頭の中ではぐるぐると祖母に言う言い訳を考えていた。いくら怒られても今更だ、と割り切っても自分は脅されてきた身だ。朔や雪姫たちにもしものことがあれば一生顔向け出来ない。 黙っていればどうにでも出来たのに...。保健の先生がさらっと「保護者様に連絡しておきますね」とおれの心臓を止める発言をしたのが重大なのだ。 迎えに来るのは最悪なことに祖母だ。 祖母だと、思ってたのに...、 「早く乗りなさい!」 来たのは祖父だった。しかも、焦ってる。祖父の姿を見た途端クラスメイトは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。 「あ、の」 「くそ!早く乗れ!」 襟首を引っ掴まれて息が詰まる中無理矢理車に放り込まれた。このパワフル爺さんは!! 「ど、どうしたんですか、何でそんな焦って」 「いまから言うことをよく聞きなさい!」 無視されたけど、祖父の焦燥感に圧倒され黙ってしまった。二の腕を両手で掴まれ目を見るよう仕向けられる。 「沙恵がなにを言っても信じるんじゃない!絶対だ!例えなにを言われようとも何をされようともだ!」 返事を促されないから代わりに勢いよく頷いた。 「写真を見せつけられても嘘だと思え!絶対にだぞ!」 大声を出す祖父が怖くて目を離すことが出来ない。沙恵、祖母のこと?なんで、そんなこと言うんだ? 「家に着いたら取り敢えず儂の部屋に行くが沙恵に会っても目を合わすな!いいなっ?」 車は既に家の前に止まったらしく祖父が勢いよく外に出てものの数分で戻ってくる。険しいその表情を見る限り良くないことが起こっているのは確かだ。 祖父の部屋だというところに入ればいきなり頭を下げられ度肝を抜かれた。いまのいままで謝られたことなど無いため目を見開く結果となった。 部屋の前には黒服が2~3人いて厳重な警備となっている。そんなに一大事なのか? 「...すまない、儂がもっと早くに沙恵の異常さを抑えつけていれば...」 びっくりしながらもどうしたんですかと問うが返ってくるのは謝罪の言葉。 「すまない...本当にすまない」 青白い祖父はなにも言わずただ謝るだけ。 どうしようか悩んでいると、甘い香りが漂ってきた。 顔を顰めて原因を探るとそれは廊下側から流れてきている。 「あら...あなた、ここにいたの」 音もなく開いた襖の奥、笑う祖母の、手には、ティーセットが。後ろ側には黒服が倒れていて、まずい、と直感する。 「...」 黙り込む祖父。膝の上の手が震えている。 「もう、どこに行ったかと思ってたのよ?折角いい方法を思いついて、それをお話しようと思ってたのに...」 「...ああ」 祖父とは対照に嬉々として喋る祖母。どこかおかしいけど、なにがおかしいのかわからない。 「.....沙恵、もうやめないか」 「...あなたまでなにを仰るの」 「意味無いだろう、こんなこと」 「でもあなたも同罪よ」 「儂は...」 2人の会話が続いてる......でも、なんだか眠くって...内容が、頭に、入って...こない。 「さぁ...譲、お茶を入れたの。新しい茶葉なのよ、きっと美味しいわ。飲んでみて?」 有無を言わせぬ祖母にカップを握らされて、目が合った。 目を合わすな!って言われた?けど、もう...眠くて。 そこから、おれは全く記憶がない。

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