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第3話

どれくらい時間が経っただろう。 夜を迎え、月明かりが差し込む蔵の二階から物音がした。 梯子を登ってみると、窓の外にシュウの姿が。隣にある大きな木を登ってきたらしい。 「危ないよ」 「大丈夫。腹減ってないか? おにぎり持ってきた」 こんな時でもシュウはいつもと変わらなかった。 「シュウも僕に近づかない方がいい。不幸になるって……僕は悪魔の子だから」 「浩太は悪魔の子なんかじゃない。一緒に帰れなくてごめん。おれも一緒にいたなら浩太だけが悪く言われなかったかもしれないのに」 「でも、そんな事したらシュウまで死んでたかもしれないんだよ!」 「おれは大丈夫」 「僕といるとみんな死ぬんだって。……僕の方が死ねばよかったんだって」 するとシュウの瞳が一瞬だけ金色に光った気がした。 きっと月明かりが反射したのだろうけど、その眼差しにぞくっとする。 するとシュウが僕を真っ直ぐに見つめて静かに言ったんだ。 「じゃあ、今ここで一緒に死ぬ?」 「な、なんでシュウまで? 一緒にとか言うの?」 「おれが一緒にいたいから」 「なんで? 死ぬの怖くないの?」 「怖くないよ。浩太がいれば。だから浩太もおれがいるから大丈夫だ」 シュウがそういった事で、自分で言い出した事のくせに急に怖くなってしまって涙が滲んできた。 「なんで泣くの?」 「なんか、考えたら怖くなった……」 「そっか。じゃあ、今はまだ死ななくていいよ」 そう言いながら怖がってる僕をあやすように優しく背中を摩ると、ちゅっと唇にキスをした。 「な、なに?」 「元気になるおまじないだって、ばあちゃんが言ってた」 突然の事にびっくりして目を丸くしていると、シュウは「涙止まっただろ?」って笑った。 「でも、まだ元気がなさそうだな……」 そう言って覗き込むので俯くと、シュウはまたおまじないが欲しいか? と聞いてきた。 僕が頷くとまた唇にちゅっと口付ける。 僕はこの行為が単なるまじないの類ではなく、キスという行為だという事も知っていたけど、シュウの唇が触れる度にドキドキして、やめて欲しくないと思ってしまった。 「元気になった?」 「…………まだ、もうちょっと」 「わかった」 友達同士でする事じゃない。ましてや男同士でする事でもない。 でも、シュウの唇の感触が柔らかくて、もっとそれをして欲しいなんて、シュウの純粋な気持ちを裏切ってるようで少し複雑だったけど、その夜、僕はたくさんのおまじないを貰った。

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