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第6話

シュウはゆっくりと僕に向かって歩いてきた。来ないでって言いたいのに何故か体が上手く動かない。 そして僕を真っ直ぐに見つめたまま両側の柵を掴んで顔を近付ける。 「人間ってね、生まれた時には既に人生の青写真っていうのが決まっててさ、寿命っていうのも大体決まってるんだって」 その瞳はいつか見た時のように月明かりを反射して金色に光った気がした。 「でもさ、死んだ魂が全てあの世に行けるとは限らないって知ってた?」 「そ、それって地獄とか……いうの?」 するとシュウは目を閉じるとかぶりを振る。 「地獄にすら行けない」 「え?」 「ここから飛び降りたら、飛び降りて地面にぶつかった時の痛みが永遠に続くだけだよ。死後の世界にも行けずに現世を永遠に苦しいまま彷徨うだけ」 そう僕に語り掛けるシュウの瞳は吸い込まれそうで少し恐怖すら感じた。 「現世を永遠に彷徨った魂の末路って知ってる?」 「……、し、しらない」 「五十年、百年と現世を彷徨い続けると苦しさからその魂は魔物になって、血を辿って末裔を呪ってしまうんだ」 「……う、そだ」 「じゃあ、自分で確かめる?」 僕は腰が抜けたみたいに力が抜けてしまってその場に座り込んでしまった。 「じゃあ、僕はどうしたらいいの? 今まで考えないように、望まないように、期待しないようにして来た。でも、もう……自分が必要とされないのは耐えられなくて壊れてしまいそうなんだ」 ぼとぼとと零れ落ちる涙と共に今まで胸の奥にしまい込んでいた感情までも溢れてきて、コンクリートに染みをつくっていく。 「わかってる。だから俺はここに来たんだ」 シュウは僕の頬を撫でると、すっと息を吸い込んで目を閉じた。 そして目を開くと、その瞳は金色に輝き青白い光がシュウの体を包み込む。 その光は一点に集まると、シュウの手の中で形を変えて身の丈よりも大きな鎌となって現れた。 その禍々しさに思わず後ずさりして鉄の柵に体がぶつかる。 「怖がらないで。痛いことはしないから」 そう言われても体の震えが止まらない。 「俺はずっと浩太のそばにいたよね。浩太が見たくないもので悩んでいる時も、誰にも信じてもらえなかった時も」 あまりの事で声も出ず頷くと、シュウが僕の首筋を撫でながら言った。 「どうせ死ぬならさ。その魂、俺にちょうだい…───」 その声に、その視線に、ぞくぞくっと背筋が凍るようなものを感じて動けなくなった。

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