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第7話
その手にしていた大きな鎌にまた息を吹きかけると、鎌からは細かな粒子のような光が放たれてすっと消えてしまう。そしてシュウは僕の前にしゃがみ込んだ。
「……え? 死神?」
「そうだよ」
「……で、でも僕、わかんなかったよ?」
「浩太の見えていたものと俺達は厳密には少し違う」
「僕が死ぬからシュウはここにいるの?」
するとシュウはかぶりを振り、僕の手を取った。
「死のうとしてる浩太を手に入れる為にここに来た」
そして、その手の甲に優しくキスを落とす。
「ずっと浩太が欲しかった」
「え……?」
さっきから何を言われているのかよくわからなくて目を見開いたまま言葉が出ないでいると、シュウが目を細めながら顔を近付け、耳元で囁くように言った。
「俺、知ってるよ」
「……な、何を?」
恐る恐る聞き返すとシュウは柔らかく微笑む。
「浩太の事なら何でも。浩太の気持ちも、浩太が俺を思って夜な夜な自分で慰めていた事だって知ってる」
思いもよらない事を聞かされて固まっている僕に追い打ちをかけるかの様にシュウが耳元で続けた。
「キス以上の事が知りたいんだろう?」
それを聞いた瞬間、顔から火が出るかと思うくらいに熱くなる。
「う、うそ……」
我慢できずにしてしまったのは自分だけど、細心の注意を払って来たつもりだった。
まさか気付かれていたなんて、混乱した僕は思わず目に涙が目に溜まり、それは溢れだしてしまう。
「ごめんなさい。ごめんなさい……」
口から出るのは謝罪の言葉ばかりで、ただ謝る事しかできない僕の頬をシュウが撫でて涙を拭うと、僕の顔を自分の方へと向けさせた。
「どうして謝るの?」
「だって僕、気持ち悪い……」
「俺は嬉しかったよ。絶望で光を曇らせた魂が俺の事を思っている間は輝きを取り戻していたから」
そう言いながらまた俯こうとする僕の頬に手を添えてそのまま引き寄せる。
そして唇に温かくて柔らかい感触が触れて、キスなんだと遅れて理解した。
思わず体を押し返そうとすれば更にきつく抱き締められ、その少し開いた唇の隙間から舌が差し込まれた。
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