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第3話 「出会い」

さっきまでは、自分の身の心配で精一杯だった俺が、なんでこんな大胆な行動をしてるんだろう。 そんなことを考えながら叫び声が聞こえたあたりまで走って行った。 ーーー・・・ー 「ー…叫ぶなって…」 (うわわわ…っとあぶね…) 「おいおい、金目のもんはこんだけかよ!!」 「じゃあ、兄貴ぃ、こいつ売っちまおうぜ!男だけど見目はいいしよぉ…ククッ」 「ご、ごめんなさい…や、やめっ…!」 声がかなり近くなったので走るのをやめ、そっと木の陰に隠れた。 「どのくらい金になんのか…ククク」 気づいたのだが、その者たちの言葉を理解することができるのだ。 (あわよくばこの世界について何か聞けるかも) と期待を込めて静かに近づき、声の主を見た、が…えっと、襲いかかってる方は… (なんだ?うん?え、…お、狼か…??) 残念なことにそいつらはよくゲームとかに出る狼人間の様な姿をしていた。どこからどう見ても人間ではなかった。 しかし、襲われてる方は人間だ。しかもとびきりの美少年。 この世界と、現実世界とでは違うということは覚悟していたが、やはりどこか疑う部分はあったようで、かなり驚いてしまった。 (しかしこれは、まさか…!狼人間×美少年のBL展開か…!?現実で拝める日がくるとは…、いやいやいや、それどころじゃねーよ!) 動揺したせいか、腐った思考に陥りそうにもなったが、危ないところで理性を取り戻すことができた。 助けに行きたいのは山々だが、どうしても自分の身の心配をしてしまう。 (とは言ってこのまま放っておくのは気分が悪い…) こういうとき、漫画では主人公がどうにかしてしまうんだけれども、俺は単なる一般人だ。 (俺じゃあんなのに勝てねーよ…どうすれば、どうしたらいいんだ) 俺がもたもたしているうちに、美少年は狼人間2人組みに紐で括られ抱えられていた。 「誰か…!!助けて…」 「…っ、くそっ」 (やっぱり無理だ…...見捨てるなんて…!!) ーーーザッ… 「待って!そこの2人組さん!どうかその子を放してやってくれません?」 できる限り相手の逆鱗に触れないようにフレンドリーに話しかけた。 明るく話しかけたら相手も明るく返してくれて平和に解決するかなー?なんて甘い考えだった。 「なんだー?このちんちくりん」 狼人間2人組は突如現れた俺に警戒していた。 「こいつも連れて行って売るかぁ?」 「それより腹ペコだ。食べねえ?こいつ。なんかいい匂いするし」 「あ、それでもいいねぇ!」 なーんて物騒な会話が聞こえた。 (え、俺はちんちくりんだから喰われるの?酷くね?) 美少年は絶望と憐れみの目でこちらを見ていた。 狼人間は一旦美少年を木に括りつけた後、すぐさまこちらに振り向き、凄い勢いでこちらに向かってきた。 ゲームならここで →逃げる を選ぶんだけど今日の俺は違うかった。 (くらえ!!) 持ってきていた虫除けスプレーを2人組の顔面に思いきりかけてやると 「うおぉぉぉ!目がいてぇ!!!」 「兄貴!俺死んじゃうよぉ!!」 とのたうちまわっていた。 (俺、やればできるじゃん...!というか、虫除けスプレー最強!) 自分より強そうな2人を相手に勝ったことで自分に少し自信も持った。 その自信は油断も共につれてきた。 そこから美少年を連れて10分くらい逃げた。 ある程度離れたから一旦止まって美少年の縄をほどいた。 美少年が暗い顔をして何の言葉も発しなかったので、 「大丈夫?間に合ってよかった!」 と話しかけた。すると、 「…助けてくれてありがと…もう、もうダメかと思った…」 美少年は顔を上げ、こぼれ落ちそうな瞳でこちらを見てきた。 一瞬血迷ったが 「どういたしまして!」 とだけ、返しておいた。 (多分俺、今、顔真っ赤になってるだろうな…恥ずかしい…) 美少年にこの世界について少しだけ聞いたが、あまり収穫は得られなかった。 しかし、美少年の住む村に連れて行ってもらえることになり、不安は少しだけなくなった。 ーーー… しばらく歩き、美少年と2人で少しだけ休憩を取っていた。 後、どれくらいだろうと思い、美少年に話しかけようとすると、こちらを向いた美少年は急に怯えた顔をした。 (え、俺、そんな気持ち悪かった?) と一瞬思ったが、 「あ、あ、う、うしろぉ!!」 と美少年は俺の後ろを指差して叫んだのだ。 「えっ…?」 と振り返ったときにはもう遅く誰かに胸ぐらを掴まれた。 「よお。さっきは弟たちが世話になったみたいだなぁ。こんなちんちくりんにやられたなんて恥ずかしことだが…」 さっきの2人組と同種だと思われたが、先程の2人組よりだいぶでかい。 「ぐっ…しょこの美少年!逃げろっ!!」 なんてイケメンなことを言ったが噛んだ。結構痛い。 美少年は震えて動けないようだった。 「というか、お前いい匂いすんなぁ…」 狼人間ボス(仮)が匂いを嗅いできた。さっきの狼人間もそういや同じことを言っていた。 (なんだ?柔軟剤の匂いか?狼人間もそういうの好きなんのか…?) 「あのー、よろしければ、この服お渡ししますから見逃してくれません?」 と言うと ーービリッビリビリィッ 狼ボス(略)は俺の服を破った。 (えぇ!?素手で破っちゃったよ…マジか…) 「違ぇ。この体から匂いがすんだよ。」 狼ボスは興奮しているように見えた。 なんか息が荒くなっている。目も血走っている。 (えーこれってBLフラグ立ってないか?) そんなことを考える俺はBLは好んでいるが、決してホモではないし、男とヤろうなんて思ったことがない。だから今の状況は本当に怖かった。 「まあ、食っちまえばわかるか」 なんて狼ボスは言っている。いやいや、食べてわかるもんなの?この世界の常識なの? 本能が危険信号を送っている。やばい逃げろ!と。 「こんなとこで人生終わりたくねー!セックスもしたことないのにー!!」 なんて自分でもおかしいと思うことを叫びながら狼ボスから逃れようと暴れた。 しかし、狼ボスからしたら、赤ちゃんがジタバタしてるようにしか感じていないようだった。 狼ボスはもう俺を食べることに決めたらしい。 「足から食ーべよっと」 なんてでかい口をあけて、ズボンを脱がし、俺の太ももにかぶりつこうとしたーー (あぁ、神様仏様、今だけは信じます…助けてーー…) そのとき、ザッという音がしたかと思うと、 「うぎゃっ、!いっってぇ!!!」 と狼ボスが叫び、俺から離れた。 (……なんだ?…助かったのか?) 狼ボスに投げられ、少し腰を打った俺はぼーっとしたまま、そこから動けずにいた。 (えっと…だ、誰が助けてくれたんだ) 顔は髪の影に隠れよく見えないが、男で、スタイルがモデル並みにいいということはわかる。 その男は持っていた剣を尻餅をついた狼ボスの鼻先に近づけ、離れた俺でも鳥肌が立つような殺気を放ち、 「早く俺の目の前から消えてくれない?」 と狼ボスに言った。 狼ボスもその殺気を感じ取ったのだろう、「ごめんなさいごめんなさい!!お助けを!」と言いながら凄い勢いで逃げていった。 (…え、味方?敵?またもや俺ピンチ…?) 第3話 「出会い」fin.

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