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第4話「枷」
「おめでとう。勝負は君の勝ちだ。」
自らが設定した制限時間に救われたヒスイは、良い対決だったと言わんばかりに握手を求めた。その背中は汗でびっしょりだ。
「黒竜は君の部屋に置いていく。ちょうど手持ちの拘束具があるから使いなさい。それと…」
カシューは慌ててヒスイの言葉を遮った。
「拘束具なんていりません!」
「また脱走されたら面倒だ。」
ヒスイは俺の両手足に拘束具を取り付け鍵をかけた。さらにワイヤーで柱に繋ぎとめると、「また明日」と言って部屋を出ていった。
拘束具そのものは革製の為、痛くも重くも無いが、窮屈で仕方がない。不機嫌にあぐらをかいて舌打ちをした。
「僕、余計な事しちゃった?」
舌打ちに反応したカシューに恐る恐る問われたが、正直なところ分からなかった。この苛立ちはヒスイに対してのものだ。
「そんな気遣いいらねぇよ。それより、床が固くて冷たい。寒いからミルクティー温めなおせ。」
「うん!」
カシューは急いでクッションや毛布を持ってきた。どこか嬉しそうに俺の言いなりになる姿が、どちらが人間で竜だか分からない。
ミルクティーは予想通り甘ったるかった。でも、身体の芯までぽかぽかになって、俺の気持ちまで解していった。
「…なってやるよ。」
鈍感なカシューは何の事をいっているのか分からないと惚けていた。祝勝祝いだと照れ隠しに、ゴホンッと咳払いをする。
「…と、友達に…なってやる!!」
「うわぁー!!本当に!?ありがとう!!」
抱きつかれた気恥ずかしさから、じゃれ合い程度に軽く蹴りを喰らわした。だらしない顔でニヤけるカシューに、こっちまで顔の筋肉が緩む。
その夜は、カシューの夢物語の続きに花が咲いた。俺とは正反対のカシューが醸し出す空気が心地良かった。こいつの側ならずっといたい。そんな事を考えながら眠りについた。
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