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第6話「不調」

 カシューとの生活は自由な反面、考えなければいけない事も多かった。  朝起きる時間とか、今日の予定とか、何を食べるかとか、どんな服を着るかとか、そんな当たり前の事まで考える必要があった。  いざ自由になると何をどうして良いが分からず、一日中カシューの後をついて同じ事をした。 「ははっ、変なクロ。もっと好きなようにして良いのに…」  カシューから「クロ」と呼ばせて欲しいと言われた。カシューが俺に出した要望はそれだけだ。俺は与えられる自由に何も疑問を抱いていなかった。 ◇  1週間程たったある日、俺は気持ち悪さに目を覚まし何度も嘔吐した。すぐに治るだろうと気楽に考えたいた。  カシューが体調を気遣い消化に良い食事を用意する。吐き気に効きそうな薬もいくつか試した。それが3日目にもなると、いよいよ心配になり医師でもあるヒスイの部屋を訪れる事になった。  今まで病気や怪我を根性だけで何とかしてきた俺は嫌だと駄々をこねた。カシューは嫌がる俺の背中を押してヒスイの前に座らさせた。 「口を開けて。」 「お前の言う事なんて聞くもんか!」  ヒスイの言葉に、ふんっと顔を背けると後ろから手が伸びて、両頬を掌で優しく掬い上げられた。頭上からカシューが迫る。 「クロ、お願いだからヒスイの言うことを聞いてよ。このままじゃ、心配で夜も眠れないよ。」  カシューの目の下にはくっきりと隈が浮かんでいる。確かにこの3日間、俺の看病でカシューも睡眠不足が続いていた。    黙って言われた通りに口を開けると、金属製の舌圧子(ぜつあつし)が舌の奥を突く。おえっとえずかされ、口腔をまじまじと覗かれた。もうそれだけで帰りたかった。 「次は服を捲って。」  ヒスイに腹を見せるくらいなら死んだ方がましだ。やっぱり帰ろうと服の裾を押さえたまま、くるりと後ろのカシューを振り返る。   「待ってクロ。もうちょっとだから、ちゃんと診てもらおう?」  カシューに悪いと思いつつ立ち上がろうとすると、ヒスイの鋭い視線を感じた。まずい《game(グレア)》だ。そう思って身構えた瞬間、カシューが口を挟んだ。

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