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第16話

「あ……」 気付くとソファで私に抱きしめられることとなってしまった師匠が目を丸くしている。 「クロム…お前は…若くて、美しい。他にいくらでも……」 「責任を取ってくださいますね?」 言いかけた言葉を遮る。 師匠は言葉を続けることができず、小さく口を開閉するばかりだ。 「貴方が私をこんな風にした責任を取ってくださるというのなら。私はもうあのように手荒な真似は致しません」 師匠の目が困惑して揺れる。 「非道い弟子だと思われたままは嫌なのです」 同情を引くような声を出すと、師匠が小さく首をふり、そんな事はないとなぐさめるように私の背中をなでた。 己の言葉に反して、師匠の優しさを利用し、たばかる。 私は師匠が思うよりもずっとずっと非道い弟子だ。 首元にキスをすると、師匠が引き離すように私の襟首を引いた。 けれど遠慮がちなその力は、制止するには弱すぎる。 拒絶の言葉を口に登らせようとする師匠の細い身体を、官能を高めるようになであげていく。 すると言葉を飲み込み、師匠の手が弱々しく私を邪魔してきた。 愛撫の邪魔をする師匠の手をそっと押さえる。 「また拘束をした方がよろしいですか?」 「それはっ……いやだ」 弾かれたように返事が返ってきた。 その反応ににっこり笑って、師匠の手を掴み、私の首を抱き込むように両手をまわさせる。 師匠はどうしていいのかわからないらしく、律儀に首を抱き込む姿勢を保った。 抵抗が無くなったことに気を良くして、私は師匠の身体に好きにふれ、口づけていく。 私が動くたびに師匠は首にまわした手をぎこちなく移動させた。 顔を寄せて口づけると、ギュッと目をつぶって真っ赤な顔で耐えている。 「師匠、そんな必死の表情もとても可愛らしいですが、少し色気に欠けます」 「俺に……色気などあるわけないだろう!」 「そうですか。でしたら私が知っている、師匠の色気を引き出す方法を試してみることとしましょう」 私は師匠が止める間もなく、試作品の性具の一つを手に取った。 「あ……クロム…嫌だ…そんなモノ…駄目だ……」 言葉は弱々しいが、ソファの端に寄って拒絶の意志は固い。 「大丈夫です。これはもう貴方への罰ではありません。私が心を込めた仕上げ作業を、師匠の身体で確認してほしいのです」 そんな馬鹿馬鹿しい詭弁も、師匠を混乱させ、戸惑わせる効果くらいはあったようだ。 抱きしめ熱を高めるように口づけて、戸惑う身体から服をはぎとり追い込むが、いつまでもゆるく抵抗をされる。 けれど延々と愛撫を続ければ、強ばっていた身体をぐったりさせ、結局あきらめ耐えるような顔で受け入れてくれた。 私の粘り勝ちだ。 手にしていたのは挿入を楽にするため、入口をほぐす性具だ。十五センチ程度でだんだんと大きくなる球がいくつも連なったように見える。 中は空洞でカップのようになっており、それを入れたままにしておくと、ゆっくりと熱が伝わり持ち手に装飾されたツタが動いて花が開く。 装飾は美しいが、やはり趣向は悪趣味だ。 師匠がソファに横になり、何故自分がこんな事になっているのか、理解できずに身を固めている。 そんな師匠に装飾の動きが良く見えるようにと、片足を大きく割り開いた。 恥ずかしそうにちらちらと自分の尻に差し込まれたものを眺める師匠を、私が眺めて楽しむ。 悪趣味な性具の悪趣味な使い方をしっかりと堪能させてもらった。 カップの中に指を入れ抜き差しすれば、意外に簡単に連なった球の段差を呑み込んでいく。 穴を広げるカップのふくらみを通り過ぎ、段差でアナルがプチュンとすぼまるたびに、師匠がちいさく息をのみ可愛らしく身を震わせる。 苦しげな表情だが、まだ硬さを持たない師匠のモノは先端に雫を含んでいた。 しばらくなじませ、性具が上を向くよう、腰を高く支え上げた。 そして、半分くらいまで差し込んだカップ状の性具の中に、小さな金属の小鳥を落とす。 「うあっ!」 カチャンという音と同時に、師匠が声をあげた。 小鳥はおもりだ。少しづつカップが師匠の中に埋まっていく。 カチャン。 二つ三つと小鳥を落とすたびに、師匠が声をあげ、カップが埋まる。 ……カチャン。 「ああっ!」 今まで入れていなかった、一番太い部分まで、師匠の中に埋まった。 カップの縁からはおもりの小鳥が顔をのぞかせ、持ち手に装飾されたツタが動いてふわりと花が咲いた。 師匠の苦しそうな息も耳に入らず、しばらくその性具に見惚れてしまっていた。 悪趣味だが可愛らしい。 可愛らしいが、滑稽だ。 師匠が誰にも見せたことがない、恥ずかしい姿を私の前で晒してくれている。 そんなことで心が満たされる私は、なんと浅ましい人間なのか。 しかし、これで師匠の慎ましやかな穴も充分に広がったはずだ。 性具を抜くと、今度は指を差し込んで効果のほどを確認する。 二本差し込んだ指を開いてはねじる。 チュプ…チュプと音がたった。 注ぐようになじませたとろみも充分に効いているようだ。 「ん…くぅ……」 私の指に師匠が腹筋を引き絞る。何ともいえない満足感で胸がいっぱいになった。 準備は整った。 入口に自分のモノをそわせてから、師匠の耳元に顔を寄せた。 「師匠、不肖の弟子に、罰を与えることではなく、睦み合う喜びを教えてください」 しかし、師匠は小さく顔を横に振る。 そして潤んだ瞳を私に向けた。 「すまない。教えようにも……その喜びを……まだ、知らないんだ」 どこまでも真面目な言葉に思わず笑みがこぼれた。 「…あんくっ……」 グプグプと容易く呑み込んだように見えたが、挿入に師匠が小さく声を漏らした。 「大丈夫ですか?」 私の言葉に小さく頷く。 その反応に私の心は踊った。 かなり強引ではあるが、師匠が『私を受け入れて「大丈夫だ」と言う』のだから、辛うじて合意の下での行為と言えなくもない。 少しづつ、ゆっくりと奥まで腰を進めていく。 根元まで納まり、二人軽く息をついた。 師匠の両手をまた私の首にまわさせる。 そして深く口づけた。 師匠も控えめにだが口づけに応えてくれる。 そんな小さな変化がたまらなく嬉しい。 この姿はどこからどう見ても愛し合う二人だろう。 「師匠……私は、もう貴方なしではいられなくなってしまいました。これからもずっと、側に置いてくださいますね?」 「あ……」 ずるい言い方をした。 こうやって、責任を問われるかのような言い方をされ、拒否できるような性格ではない。 「……けれどクロムは若い……だから……」 「ええ、私は若い。だから、師匠が思っているより、ずっと貴方に夢中なんです」 「っっ……」 自分の気持ちを示すように強く激しい動きで中をすりたてる。 グチュ……グチュ……と音が立つ。 私の欲が師匠の中に注ぎ込まれていくようだ。 「しかも、幼い頃からずっと貴方に憧れ続けてきた。その長年の想いが恋に変わってしまったんです。貴方は一時の気の迷いだと思うかもしれません。けれど、ご存知の通り私は貴族でありながら職人に弟子入りを果たしてしまうほどに、諦めるということを知りません」 さも今回のことが恋するきっかけであるかのような言い方で想いを伝えた。 けれど、本当はもうずっと前から恋をしていた。 私はまた、師匠に嘘を重ねてしまった。 師匠の中の快感を示す部分を殊更に刺激する。 「あ……うっくぅっ……んく…………ふぅっ」 こらえるように息をつめる師匠の腰を持ち上げ、私のモノが入っているところを見せつける。 師匠は恥ずかしそうにギュッと目を瞑った。 「貴方に包まれて、私がどれだけ幸せかわかりますか?」 私の動きに合わせて細い足が大きく開いて揺れる。 隠すように顔を覆った手を引きはがし、押さえつけた。 「この程度では、伝わりませんか?」 耳元で囁く。 私に言葉を返そうといない師匠に少しじれていた。 中を穿ちながら、同時に師匠の前をすり立てる。 後穴を犯されただけで、師匠のモノはゆるく芯を持ち、じっとりと露が溢れて誤摩化しようの無い快感を示していた。 師匠が後穴を愛されるのを好む(たち)なのはまちがいがない。 「ああっっ……ん……っくんァんんんんん!」 必死に声をかみ殺しながらも、前後同時の強すぎる快感から逃げるように腰が暴れ始めた。 この反応がただ快楽に流されただけなのか、それとも私が与えるものだからなのか。 私だからこそ、師匠がこんなあられもない姿を見せてくれるのだと思いたい。 「あ……うう……あああ……くっ」 突けば逃げる仕草を見せるココが師匠の好む箇所に違いない。さらに丁寧に追い込めば、とうとう暴れることも出来なくなり、ギュッと身を縮めて快感に耐えるだけになった。 「師匠、責任を取ってくださいね…?」 「ぁうくっ……せ……責任?」 うつろな表情で、ようやく言葉を返す。 「ええ。私は可愛い恋人と、甘いときを過ごす……という、ごく一般的な夢を持っていました。しかし、私はもう貴方以外欲しいとは思えなくなってしまった。ですから責任をとって貴方がその役割を果たしてください」 勿論ウソだ。 私の夢は『シロガネ』の弟子となることだけだった。 けれど師匠は困惑の表情を浮かべる。 「そ……ぁっく……無理にっ……決まっているだろう!俺が可愛くなるなんて」 問題はそこなのか。 必死な師匠の反応がその一言で、すべて微笑ましいものに見えてしまう。 「私の目には、すでに可愛いらしく見えているので問題ありません」 「そんなはずっ……ないだろう!っっくうううっ」 イクのを我慢しているのか、ブルブルと震えて声も絞り出すようだ。 「貴方がそれほど私をおかしくしてしまったということです。恋人にしていただけないなら、私はあれらと同じ、師匠の性具にすぎないということですね」 「ばかな……!クロムは違うっっ。あんなものとは!」 潤む目を見開いた師匠に、思わずにっこりと微笑む。 「では、今日から私たちは恋人です」 「んくぅ………んんんっ!」 深く深く口づけながらさらに追い込むと師匠が引きつるようにビクンビクンと激しく身体を跳ねさせた。 「イったのですか?」 「……わ……わから……ない…………んぅっん……」 あきらかに先ほどまでより声が甘い。 「ぁううぁ……」 ゆっくりとした腰の動きに変えると甘いうめきを漏らし、甘えるように私の背中をさする。 「ああ……師匠。今の貴方を見れば、もう色気に欠けるなどと言うことはできませんね」 興奮を隠さない私に、師匠の方からぎゅっと抱きついてきた。 私よりすっと年上のこの人にこんな風に甘えてもらえるなんて思わなかった。 信じられないほど、愛らしい。 そして、こんな愛らしい姿をもっともっと見たくてたまらない。 「……私もそろそろイキたい。貴方の中で」 目を見つめて言うと、重なる胸がドキンと大きく拍動したのがわかった。 徐々に快感を高める動きに変える。 そして師匠の手を、師匠自身のモノに沿えさせた。 中もふれる身体も全てが熱い。 『シロガネ』の作品のように、私は師匠の熱に突き動かされていた。 「師匠……師匠……はぁっ。ああ……もう、たまらない……」 みっともないくらい師匠を求め、腰を打ち付ける。 「ンっんあぁっクロムっ……くぅっ……ま……またっっっ」 自分勝手にむさぼっているが、師匠も共に高まってくれているようだ。 師匠の手が控えめに私の身体をなでる。 そのほんのささやかな動きに私の心は喜び沸き立った。 「ん…んはぁ…師匠…っっ愛しています。私のものだ。……私の…私の……っっ」 「ぁあっ…!クロム………!」 深く深くねじ込んで、想いを注ぎ込んだ。 それにあわせるように、汗に濡れた身体をヒクつかせる師匠の前をグチュリグチュリとこすりあげ放出を促す。 「くぁっ…んくっっ…んぁふううう!」 息も絶え絶えに師匠もドプリと液を飛ばした。 ゆっくりと慎重に師匠の中から抜け出る。 「んぁん……っ」 排泄感に師匠が甘い快感の声を漏らした。 まだ広がったままの穴がピンクの内壁を見せている。 私を受け入れていた部分がゆっくり閉じ、キュウっと絞まったと思うと、私の注ぎ込んだ精液をグプリと吐いた。 師匠の尻から流れ出し身体を伝うそれが、私の欲と師匠の欲が混じった証のように見えた。 けだるい腕を持ち上げ、荒い息の師匠を抱き込む。 「師匠『可愛い恋人と、甘いときを過ごす』という私の夢、必ず叶えてください」 困ったように私の胸に顔を埋めた師匠を見れば、先ほど思いついた即席の夢に師匠をつき合わせることに、罪悪感など一切感じなかった。 そして師匠は責任感から私の強引で傲慢な愛を受け入れ、さらに『恋人と、甘いときを過ごす』という言葉に縛られていった。

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