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第21話
夕食はクロムの予約した店でとった。
貴族が多く利用するような、味も食器も内装も素晴らしい店で、クロムと一緒でなければ絶対に来ることはなかっただろうと思う。
家族でも来ることがあるようで、俺が話を向ければ、懐かしそうに子供のころのことなどを話してくれた。
強硬に反対はされても、最終的には弟子入りを許してくれたことからわかるように、クロムの家族は優しい気質のようだ。
生活に困窮した下級貴族ならまだしも、普通は閉じ込めてでも反対するだろうし、絶縁でもしない限り弟子入りは叶わないだろう。
クロムの話を聞きながら、普段口にしない高級な酒を楽しむ。
思いがけず充実した時間だった。
それから軽く酔いをさまし、谷へと戻った。
自室で一人になると、自然と頬が緩んだ。
少しだけ酒が残っているので、感情に素直になってしまっている。
『これは……デートです』
クロムの言葉が蘇る。
デート。その自分になじまない単語に今さらながらソワソワとしてしまう。
それまでもクロムとの外出は楽しかったが、デートと言われ、普段余り足を運ばないようなところに行くだけで、自分がこんなに浮かれてしまうとは思わなかった。
ニヤニヤしそうになる顔を落ち着かせていると、クロムが湯の用意ができたと知らせにきた。
浴室へ行って湯につかり、一息ついた時に、浮かれているのは自分だけではないのだと知った。
最近はクロムの若い身体を刺激しないために、入浴の手伝いは強く断っていたのだが、今日は勝手に入って来てしまった。
しかも手伝いではなく共に入るつもりのようで、浴槽に浸かったままの俺に、いきなり激しくキスをしてきた。
戸惑い逃げようとする俺を、クロムの唇が追いかけてくる。
しばらく無言の攻防が続いたが、いつまでも湯に浸かっているわけにもいかず、立ち上がったところを抱きしめられ、首や胸に舌を這わされる。
「クロム……せめて風呂から上がってからにしてくれっっ!」
「初心に返り、久しぶりに入浴のお手伝いをしたいと思いまして……」
本当に初心に返ったのなら、俺にこんな真似はしないはずだ。
そう思うが、逃げることも叶わず浴室の壁に追いつめられた。
クロムが身体を洗うフリをして、泡をつけた手でヌルヌルと俺をなで上げる。
「んぁ……」
詰めていた息を吐いた。ただそれだけなのに、
「そんな艶めいた声で私の高ぶりをさらに猛らせるだなんて、いけない人ですね」
と、クロムの硬いモノで尻をなでられた。
その感触にまた身震いをする。
「クロム、お願いだから、せめて寝台で……」
俺の言葉に反応するようにクロムがグンと力を増した。
「ああ、まさか……サソラに『寝台で』と乞われるだなんて……今日は、今日は何と素晴らしい日なのでしょう」
感動ひとしおのクロムにぎゅっと抱きしめられる。
けれどまだ寝台へ行くつもりは無いらしく、尻を突き出す恥ずかしいポーズで、今まで洗われたことのないところまで洗われてしまった。
いや、洗われただけならまだいい。
力では負けないはずなのに、抵抗をしても武術の心得のあるクロムには通用せず、軽く押さえ込まれると、仰向けで膝を掴まれ大股開きにされてしまった。
「ここまで丁寧に洗ったのですから、サソラが嫌がる理由ももうありませんよね」
そう言って、足首を掴まれ足の指を口に含まれる。
「サソラの身体で、私のふれたことのない場所をなくしてしまいたいのです」
チュバっと吸われ、ヌメヌメと舐め上げられる感触に快とも不快ともつかない鳥肌が立つ。
例え清潔であったとしても、クロムの口に俺の足が入るなどとんでもないことだ。
何とも判断のつかない感情が暴れ、涙が滲んだ。
「ひあっあっああっあっ!」
俺の涙になど気付かず、足の裏、かかとへと次々に舌を這わしていく。
ビクビクと足が跳ね、くすぐったさが快感に繋がり始めた。
そのまま、ふくらはぎに上がり、膝の裏を舐められ、また俺は声を弾ませる。
太ももをゾロリと舐められると、そのまま両足を持ち上げられた。
背中で身体を支えるだけの不安定な姿勢のまま、いつもクロムを受け入れている部分を舌でなぞられる。
「んくっ」
小さく息を呑んで、声が出るのはこらえた。
しかしこらえきれないその舌の感触から逃げるように腰が跳ねる。
「ああ、そんな顔で、こんな誘うように腰を動かして……。こんな淫らな姿……。もう…ああ…サソラ……」
俺の抵抗は逆効果だった。
「んあ、あっ……やめてくれクロム……」
クロムは俺の言葉など全く聞いていない。
熱い舌に翻弄され、刺激に身体が緊張し、また緩む。
身じろぎする度にチャッチャッと濡れた床が水音を立てる事すら恥ずかしい。
「んぁああんんっっ……」
心は拒みながらも身体は、優しくなぞられ、時に強く揉み解すように愛撫するクロムの舌技にとろけてしまっている。
「ぁあっ……も…あ…ぁあっ……」
気付けばねだるようにクロムの腕をなで上げていた。
素早い舌の動きにも、大きく舐めあげる動きにも、全て反応を返してしまう。
ヌルリとした舌に溺れそうだ。
どうにもならないくらい俺の身体が悦んでしまっているのはクロムにも丸わかりだろう。
だらしない嬌声をあげて、節操無くもっともっと乞うてしまいそうになる。
やっと甘美な刺激から解放され、ほっと脱力し、俺は浴室の床に丸まるように転がった。
なのに、また片足をすくいあげられ、今度は前を口に含まれる。
「もう…ああっもう……あっ!……あぁ!……あぁ!ぁああっ!」
間違ってもクロムの口に放出してしまわないよう、必死でこらえる。
これもこれまでずっと拒んでいた行為だ。
混乱と未知の感覚で、泣いてもいないのに涙が頬を伝った。
ジュプジュプと美しい口を出入りする自分のモノが恐ろしく思える。
けれど同時に、たまらない喜びも溢れてくる。
頬をなでるとクロムが幸せそうに微笑んだ。
「こんなにも張りつめてくれて……サソラ、私の口は気持ちいいですか?」
「……。あっああっっ!」
無言でいると、ジュボジュボと卑猥な音を大きくし、さらに激しく口内でこすり上げられた。
「もう、イってしまいそうなくらい張りつめているのに……この程度では足りませんか?」
「そんな……もうやめてくれ……クロム、お願いだから」
「でも、まだ足りないのでしょう?貴方の口から『気持ちがいい』という言葉が出るまでやめられません」
クロムがまた無茶を言ってきた。
そんなこと、俺に言えるわけがない。
なのに、やめないという言葉通り、クロムはジュポジュポと激しい刺激を続ける。
必死に耐える。けれどこのままでは口に出してしまうかもしれない。
「ああっ!やめっ!クロム……!ああっ!もう……無理だ!」
「気持ちいいですか?」
「いいっ!もうっ!あっ!きもちっっっいいっ!イイっっから!ゔあァっン!も、やめ……!クロムっ!」
俺の必死の訴えに満足したのか、やっと口を放してくれた。
ゼイハァと荒い息をする俺を、たくましい腕がいたわるように抱く。
けれど、こんな風にしたのはクロムだ。
恨みがましい視線をやるが、それさえ嬉しそうだ。
少し息が整ったと思ったら、今度は背中や脇をネットリと舐め上げられる。
「も……あっっ!もう!なんなんだっ!これはっ!これはなんなんだ!」
この状況が全く理解できない。
ここは風呂だ。
疲れをいやすために入浴したはずなのに、身を固めて快感に耐え、どうにもならないくらい翻弄され、すっかり疲れ果ててしまった。
一体クロムは何をしたいのか。
わけが分からない。
「んあっ!あっ!……何でだクロムっ。今までは……嫌だと言えばこんな事は……。なんで急にっ……ん!」
「ずっと我慢していたのです。けれど、今日は……」
クロムが妙に口ごもり、俺の身体に顔を伏せる。
「今日はなんだって言うんだ」
少し苛立った俺の言葉に、クロムが眉尻を下げ、少し情けない表情をした。
今まで散々俺を追いつめていたくせに、急にずぶ濡れの犬のような顔を見せるのはずるい。
「後でお話しします……。それでよろしいですか?身体が冷えると悪いので、もう一度湯に浸かってください」
なんだかはぐらかされてしまったし、身体も温まり直す必要のないくらい熱くなってしまっていたが、ここで余計なことを言ってまた続けられても困るので、素直に湯につかりすぐに風呂からあがった。
身体が重く、それでいて力が入らずフワフワとするおかしな感覚に戸惑いながら、風呂あがりの水を飲んでいると、少し遅れてあがってきたクロムに強引に肩を抱かれて寝室に連れいていかれる。
寝室には芳香が漂っていた。
ふと見ると俺の作った香炉が白い煙を昇らせていた。
今日クロムが買った香に他の香を焚き合わせているようだ。
爽やかな木の薫りにふくよかな花のような薫りが合わさり、足だけではなく頭までふわふわとしてくるようだ。
当然のように寝台へと押し倒され、浅く深く繰り返すキスに翻弄された。
本当に今日はどうして……。そう聞こうとするが、風呂で散々舐められ、敏感にされてしまった身体を、また手と舌で愛撫され、俺の疑問をクロムの耳に届けられない。
「ああっ!」
すっかり敏感になってしまった乳首を甘噛みされ、同時に手で俺のモノをクチュクチュとこすりあげられる。
さらに、前を刺激されたまま深くキスをされ続け、俺はクロムに与えられる快感に完全に飲まれてしまった。
「気持ちいいですか?」
キスの合間にそう聞かれ、必死で頷く。
ふっと嬉しそうに笑ったクロムに口内を甘く舐め上げられた。
「あふ……」
自分の吐く息が甘い。
クロムの足に自分の足を絡め、愛撫に身体をくねらせ続けた。
「後ろを向いて、足を開いててください」
言われるままうつぶせになり、自ら大きく開いて片足を上げた。
「んぁあんん!んんっ!んぁっ!」
後穴に風呂でされたのと同じ、ヌメリを持った愛撫をあたえられ、思わず悦びに腰をうねらせた。
しかし、腰を押さえこまれる。
「ぁあ、あひっ、あ、あァアん……」
クロムの顔がソコに触れているのが見えないというだけで、与えられる快感に随分と素直になってしまっていた。
温かい舌先がヌプヌプと穴に入り込み、敏感な粘膜をトゥルリトゥルリと愛撫するたび、甘い快感に身が震え、ふれてもいないのに前から悦びの蜜がトロリと溢れる。
「ひぁ……んァアン……」
信じられない嬌声をあげ、腰を前後に振って、もっとクロムの舌が欲しいとねだってしまう。
「気持ちがいいですか?」
そう言われてまた頷く。
クロムもそれが気配で分かったようだ。
「こうされるのは、お好きですか?」
「ぁ…ぃやだ……」
信じられないくらい甘えた声だ。
クロムがふっと笑ったのがわかった。
俺の口から出た『嫌だ』という言葉に、言葉通りの意味がないと伝わってしまっている。
背中からのしかかるように抱きしめられ、入口にクロムのモノが沿えられた。
挿入の予感に勝手に胸がドキドキと高鳴る。
けれど、しばらく入口をくすぐるように刺激されるばかりだ。
その甘い疼きを生む感触に俺は無意識で足をさらに開いてしまっていた。
耳にキスされ、舐め上げられ、ゾクリと背中を震わせる俺に、またクロムが囁く。
「愛しいサソラ……。貴方も私を欲しいと思ってくださっていますか?」
その言葉に、小さく頷く。
けど、クロムはちょっと小首をかしげる。
ささやかな催促だったが、とろけきった俺には充分に効いた。
室内を漂う香にも心を緩められているようだ。
振り向いてクロムに顔をすりつけながら小さく囁く。
「クロム…が……ほしい」
俺の甘え含みの言葉にクロムは満足げに微笑んで、自らの熱い愛を俺の中に優しく激しく刻み込んでいった。
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