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第4話 溢れ出す
一瞬の沈黙。
グラスの氷の音が聞こえ、息を吸う。
空気が一瞬にして変わってしまった。
グラスをもって勢いよくジャックダニエルを飲む。
何をいえばその場が過ぎ去るのか、頭の中がわかりやすくぐるぐるしている。
「片想いって厄介ですもん。」
また、上から声がする。さっきまでと変わらない声のトーン。
「しかも、砂川さんってうちに閉じ込めるタイプでしょ!相手に悪いと思うと自分の感情さえ押し込めて我慢しちゃいそう!」
上から降り注ぐ言葉が痛い、当たりすぎていて怖い。
コースターに視線を落とし、手はグラスを挟み込むように固まり、肩に力が入る。
――もう、やめてくれ。俺を見透かすな
胸の当たりが気持ち悪く、喉の奥が苦しく、息をするのもつらくなってきた。
そんな俺に、蒼井はつづける!
だーかーらー!
「ね!今日は吐き出しちゃいましょ!!」
パンと手を叩き、いいこと思いついたー!と子供のようにはしゃいでした。
初めてあった相手にここまで見透かされ、気を使われている。
もう、どうにでもなれ!と半分以上残っているジャックダニエルを一気に飲み干し上にあげる!
「おかわりくれ!濃いヤツ!!」
「よろこんでー」
どっかの居酒屋のように声を上げ、お酒を作る前にさささっと玄関に行ってシャッターをしめた。
ダメ押しのように看板の電気を消し、CLOSEの札もつける。
時計を見たら1時半、まだ閉店時間じゃない。
え、え、なんで?と困惑してたら
「これで邪魔は入りません、実はね1時間誰も来ないなんて結構稀だったんだよね。
俺もとことん付き合うし、こっからは俺ん家にいると思って!恥は書き捨てでしょ。」
恥は書き捨てって、旅じゃないし。
さっきのクールなのが仕事モードだったんだな、とわかるほど気飾らない態度になって、言葉遣いが若くなっている。
イケメンとしか観てなかったけど、実は結構若いのか?す
肌はツヤツヤしてて張りがあり、細身の割にシャツの下からもわかるほど筋肉がしっかりしていた。
あいつへの片想いを語れる日が来るなんて。
困ってるのか嬉しいのか、わからないけど。
とりあえず、目の前の濃いめのジャックダニエルをぐいぐいと飲んだ。
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