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第18話 また日常が始まる

目が覚めたら昼すぎで、蒼井の姿はもうなかった。 起き上がろうと身体を動かすと、腰とお尻に鈍い痛みが走る。 ぐ、なんだこれ!動けない。痛みと共に蒼井とのセックスを思い出し俺は蒼井に抱かれたことが夢ではないことを思い出す。 部屋を見渡すとテーブルの上にコンビニの袋が置いてあった。 そこまで行こうと動くが、俺の身体に漬物石を括りつけられたのか!というくらい身体が重くたどり着くのになんと数分もかかってしまった! 袋の中にはでパンとおにぎりとお茶と二日酔いに効く薬が入っていた。 何個もたくさん、俺が寝てるあいだに買いに行ってくれたのか。 そう思うと可愛くて胸がきゅんとした。 「帰ります、携帯登録しておいたので連絡下さい。ゆっくり休んで」 書き置きのメモを見て携帯を開く。 蒼井響一と書いてあるアドレスと、LINEのアカウント。 痛みはあったが、溺れそうになる夜だった。 快楽か、蒼井か、もっとしてくれと求めていた。蒼井は俺の視線を奪って離さない。 「はぁ、はぁ」と吐息を漏らしながら自分のモノを擦り、俺をみながらハテた姿は恐ろしく綺麗で今まで見た何よりもエロかった。 無性にタバコを吸いたくなって探したが、ベッドに置いたことを思い出し途方に暮れた。 月曜はあっという間に始まった。 まだ身体はだるい。昨日は一日寝ていたのにそれでも身体に重りが張り付いているようだ。 あれから風邪も引いたのか、喉も痛く軽いめまいもしている。 体調は最悪だ。 「おはようございます。」 身体の怠さを悟られないように、できるだけいつもどうりに振る舞い、仕事に入る。 今日は会議で使う書類の最終確認の日、金曜に残業して仕上げた書類を上司に確認してもらうために軽くチェックしていると。 「砂川さん、おはようございます。金曜は体調不良とはいえ、お休みすいませんでした。」 ヘラヘラ笑いながら竹山が俺に頭を下げる。 いつもなら、気をつけろ!と注意する程度で済ませていた。吉岡からも、砂はほんとに甘いよな、と呆れられるくらい、流石に自分でも甘いと思っていた。 しかし、こんな風に仕事から逃げたのは4回目だ。 いつものように注意だけで終わりにするつもりはない、さてどうしたもんか。 俺が反応しない事に竹山は少し戸惑っていたが、表情はヘラヘラしたままだった。 「あの、会議の書類を引き継いでいただいたみたいでありがとうございました。俺の方でチェックして部長に確認してもらいますね」 それは、俺が残業までして終わらせた書類を自分でやったかのように部長にみせます、という報告だ。 やはり竹山は甘えている、仕事に、そして俺に。 最初から出来ないのは当たり前なので、多少多めに見てきたがこんな態度を取られてしまい、怒りというより心底ショックだった。 残念だ、そう小さく呟き竹山の話を無視しチェックを続けた。 「あ、あの、砂川さん?俺やりますよ。」 「何故だ」 「え・・・俺が頼まれたので、」 「お前は投げ出したじゃないか」 いつもは出さない声色に、ピリッとその場が凍る。 「・・・熱が出てしまいまして」 竹山の表情が固まり、気まずそうな態度を取ってはいたがほんの少し憮然としていた。 具合悪かったんだからしょうがないだろうと。 「体調を崩したのはしょうがない、ただ締切が金曜の書類がどこまで終わっているか、どういう内容でまとめるのか何も報告もせず、俺が終わらせてくれるだろうと高をくくって休んだのが許せないんだ。」 竹山は助けを求めるように同期の方をちらっと見たが、同期も全員俺の言葉に頷いていたのでうつむくしかできなくなっていた。 「しかも、ほとんど出来ていなかった。資料まとめも中途半端、あんなんで終わるはずがないだろう。」 「初めてで、わからなかったんです。」 「わからないなら何故聞かない!前も同じことがあったぞ、わからないなら投げ出していいのか!」 「もう、俺はお前に何も頼まない!そしてお前の尻拭いも二度としない。」 青い顔をして、竹山は立ちすくんでいた。 す、すいませんと謝っていたが俺は無視を押し通した。 部長に書類をチェックしてもらい、俺はこれまでの流れを報告した。 自分が甘いからこその結果だと謝り頭を下げる。 「いやいや、砂川くんは良い先輩だよ。フォローしていたの知っていたしね。すまないね、いつも厄介な人を任せてしまって。」 すまなそうに部長はいったが、やっぱり俺はいつも厄介な人を任されていたのか、と呆れてしまう。 「竹山くんのことは君に任せるよ、頼むね」と、すべてを丸投げされた。 おい、頼むな。 竹山は相変わらず青い顔をして、自分の仕事をこなしていた。 蒼井に話したら何ていうだろう、後輩くんダメだなーとか笑ってくれるかな。 あの細くて長い指、俺の指とは次元が違う。 ふと、蒼井がいやらしく俺の指を舐めたことを思い出し赤面してしまう。 仕事中にもかかわらず、蒼井がハテたあの顔が浮かぶ。 はぁ、はぁ、と気持ちよさそうな吐息、ああ、あの顔が見たい。 蒼井は、今寝てるのだろうか。 竹山の今後より、蒼井との今後のほうが重要なことだ、と遠くを見ながら軽く笑った。

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