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第25話 無神経にきらびやか
【蒼井響一の場合】
ホテルの光は無神経にきらびやかで俺に似合っている。
慣れたようにチェックインし、部屋に入るとざつに上着を脱いでソファに投げた。
今日は店の定休日。俺は砂川ではない男とラブホテルに来ている。
砂川の看病をしたあの日、結局昼まで居座った。
昼飯を作り、砂川が食べるのをぼぉっと眺め薬を飲んだのを確認してから俺はあの部屋を出た。
実は休みだったが、気を使わせゆっくり休めなかったら悪いとさっと帰ることにした。
「助かったよ、ありがとう。」
砂川が玄関まで送ろうとしたのでそっと断り
「いいから今日は1日ゆっくり休んで」
と、上着を来てカバンを持ち玄関をあけて外に出る。
「近々、店に行くよ。」
「お待ちしております。でも元気になってからにしてね」
バタンとドアが音を鳴らし閉まった。
昼時の騒がしい駅前をゆっくり歩く。
俺の家は店から10分程度の所で、狭いが使い勝手のいいワンルーム。
砂川とは反対方向で、砂川の家からだと歩いて20分程度。
いつも自転車で来ているので、一旦店に寄り自転車に乗りうちに帰る。
家に着いて乱暴にベッドに飛び込んだ。
寒い、とても寒い。あの場所にいた時は感じなかったのに。
頭と心を同時にぐちゃぐちゃ混ぜられているようだ。
どうしようもなく誰かを抱きたくなった。
すぐに砂川の顔が浮かんだが、体調悪いのにそれは出来ない。
この困惑した気持ちをぶつけてサッパリしたい。
今日は火曜日、店の定休日だ。
俺は携帯を取り出し、セフレの一人に連絡を入れそのまま横になった。
「急に悪かったな」
「いいよ、最近忙しくてやる余裕無くてさ、溜まってたからちょうど良かったわ」
スーツの上着を脱いで丁寧にハンガーにかけながらツネは言った。
ツネは数少ない1回のみではなく続いているセフレだ。
小柄だが色黒で筋肉質。昔から野球をやっていて、先輩後輩にやたら厳しい。
顔はタレ目だがまつ毛が長くて綺麗で、くしゃっと笑うので笑うと目が細く線のようになっていた。
髪の毛は坊主に近い短髪で、私服の時はたいていキャップを被っている。
そして先輩に愛されてきたんだろうな、という懐に入る技術が素晴らしい。
夜の8時、ツネは仕事帰りで、疲れたーっと大げさに振る舞っている。
裏表のない性格で、距離感も心地よく付かず離れずゆるく続いている。
体育会系のツネはとてもさっぱりしていて付き合いやすい、お互いタイプが違うのでセックスのみしたい時だけ連絡をとりあっていた。
「でも珍しいね、アオから連絡くれるなんて」
「そうか?」
「そうだよ、くるもの拒まず去るもの終わずのアオさんは自分からは誘わないじゃん。会うのも久しぶりだし。」
ツネはタバコに火をつけ笑いながら吸った。
「ツネってタバコ吸ってたっけ。」
は?と険し顔をして、前から吸ってたわ!と怒った。
煙に包まれた部屋にひどく興奮した。
砂川の指、あの口から吐き出された煙を思い出す。
ふぅーと煙を吐き出したツネを押し倒し服を脱がせる。
「おいおい、ちょっと待てよ。まだ風呂にも入ってないぞ」
タバコを奪い、灰皿に置くとツネの服を乱暴に脱がし露わになった乳首に噛み付いた。
「あっ!あぁ」
ツネはたまらず甘い声をあげながらも急に噛みつかれ動揺を隠せない。
Mっ気があるツネは少し乱暴にしても気持ちよさそうによがり、むしろもっと激しくしてくれ!と腰を振る。
ツネの上に乗っかり、激しく乳首を吸いながら愛撫をする。
「ちょっ、ああ!そこばっかり、んぁ、あっ!」
必要に乳首を弄び服をすべて脱がせた。
すでにツネの股間は盛り上がり、ピクピクと動いている。
乳首から離れ、ツネのモノをいきなり咥えた。
「あぁぁぁ!ああ、、あぁぁ」
痛いくらいに激しく咥え、いやらしい音を立てながらしゃぶると、ツネは体をそらしながら喘いだ。
「あ、あぁぁぁ、いい、あっ、」
腰が動き、小刻みに震えてくる、あ、もう少しでイクな。
俺は更に激しく吸い上げ、乳首を強くつまんだ。
「あ!あ!イク、だめだ、もうイク」
そう言うとツネは俺の口の中で熱くドロッとしたものを出した。
口いっぱいになったものをティッシュに出して、横たわるツネを起き上がらせ風呂に押し込んだ。
「俺より先にイッたんだからすぐに準備して自分でならしてからこいよ!」
「…おい、鬼か!」
ぐったりしているツネはのっそりシャワーを浴び準備を始めた。
シャワーの音がする、ツネの喘ぎ声を聞いても俺の心は砂川に占められている。
ツネの喘ぐ姿よりタバコを吸う砂川を思い出しただけでお腹の下あたりが痺れた。
結局ツネは言われたとおり綺麗に準備してきた。
俺のものを咥えさせ、ツネが丁寧に俺のものを舐める。ゆっくりねっとり。
大きく固くなり、入れる準備を整え、期待の眼差しを俺に送るツネを四つん這いにし、欲望のまま激しくツネを抱いた。
ツネとやりながら、砂川が現れる。
乳首を甘噛して、んぁ!と甘い声を漏らし、繋がったときのあの顔。
まだ痛みがあるのか、眉間に皺を寄せ、ゆっくり動くと痛み以外の快楽に耐えられなくなり声をあげて。激しく動いたらどうなる、俺を求めてくれるだろうか。
何度も何度もツネを激しく突き上げ、がむしゃらに腰を振った。
何かを壊したいような、認めたくないような感覚。
そのたびにツネは大きく喘ぎ、どんどん快楽に支配されていき、ヨダレを垂らしながら腰を自分からも振った。
「あぁぁ!ダメ、もうダメ、あぁぁ!イク!イク!あぁぁぁー!」
ツネの声を勝手に砂川の声に変換した瞬間に俺もハテてしまった。
その後、ツネはしばらく動けずベッドでへたり込んだ。
ふぅ~とため息をつきツネが俺に向かって、今日はすげーな、腰抜けるわ!と笑い、
「やっぱり鬼だな、てかさ、何かあったのか?」
と、続けた。
うん、あった。
でも説明はできない、俺もよくわからない。
「まぁな、乱暴にしちゃって悪かったな」
「いいよ、俺乱暴な方が好きみたいだし」
「知ってる。」
ツネのタバコを一本もらい深く吸い込んだ。
砂川は今何をしているだろうか。寝てるだろうか、夕飯食べたかな。
もう、完全に治っていればいいな。
他の男の横で、何度も砂川のことを想い、深く煙を吐き出した。
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