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第26話 休息
深い深い眠りだった。
俺が何歳で、どうしてここにいるのか一瞬悩んでしまうくらい頭がボーッとしていた。
部屋は薄暗く、体中に汗が張り付いていたのでのっそり起き上がり風呂場へ向かう。
あんなにも身体がだるかったのに、今はとても身体が軽い。
時計を見ると夕方の7時半、睡眠って大切なんだな。
シャワーを浴びながら今日の会議は上手くいったかふと心配になったが、吉岡のことだから上手くやっているだろうとすぐに考えるのをやめた。
吉岡は陽気で馬鹿なやつだけど仕事が出来る優秀なやつだ。
そう見えないのも凄い、さらっとこなしてしまう凄さがある、努力より天才型だな。
頭を洗い終え、身体を洗い出す。
シャワーの横にある姿見に映し出された自分の首元にうっすら赤い跡がある。
その後を軽く触り、蒼井を思い出す。
結局昼くらいまで寝ることもなく、話すでもなく俺のそばにいてくれた。
俺が目を覚ましたときには、俺の横にはおらずソファで携帯をいじっていた。
「起きたなら、おかゆ作るね。もうお昼だし食欲なくても少しは食べて薬飲んで。」
そう言ってインスタントのおかゆを作って持ってくる。食べやすいようにスプーンを添えて。
甲斐甲斐しいとはこのことだ、食べ終わった器をさっと受け取ると水と薬を渡す。
無言で薬を飲むと、そっと俺に近づいておでこ触った。
「うーん、だいぶ落ち着いてきたね。もう少し寝てて」
布団をそっと掛け直し、俺がいると気が散るか、と小さくつぶらいた。
気が散ってもいいから、まだいていいのに。
言いかけて、困惑する。なに、俺そばに居てほしいのか?引き留めようとしてる、さっきまで帰れとか言ってたのに、弱っているときに漬け込むやつの気持ちがわかる。
ぐらっと落ちる感覚。
蒼井は軽く洗い物をしてから帰る支度をしだす。
上着をきて、バッグを持ち忘れ物はないかと、周りを見渡してからそろそろ帰る、と俺のそばに近づく。
一緒にいることのほうが自然に思えるこの空気、そんな人はじめてだ。
どちらかと言えば誰かいると無意識に力が入ってしまうのに。
「砂川先輩、大丈夫ですか??」
後輩の田中が心配そうにかけよってきた、昨日休んだ分を取り返そうと今日は一番に出社したと思っていたが田中は俺よりも早く来ていた。
知らなかった、こいついつもこんな早くに来ていたのか。
「迷惑かけてすまなかったな、1日寝たら熱もひいて落ち着いたよ。」
「良かった、最近色々詰め込んでいたから疲れが出たんだと思います。」
無理はしないで下さいね、とそっと俺の方をトントンと叩く。
「ありがとう。田中っていつもこんなに早く出社しているのか?」
「たまにですよ。私仕事が遅いからいつも残業になっちゃうので早めに来て朝のうちに出来ることをやっておくんです。」
そうだったのか、田中は竹山と同期でまだ新人だがそつなく仕事をこなしているとおもったが、彼女なりに努力していたんだな。
そう思ったら、そう気づかせずここまで頑張っていた事に感心した。
「田中は偉いな、俺気づかなかったよ。何かあれば相談してくれて構わない。俺で力に慣れることがあれば手伝うから」
「ありがとうございます、もうすでに色々助けてもらってますよ。」
そう可愛い笑顔を見せてお辞儀をすると、ではほんとにムリしないで下さいねと言って席に着いた。
同期なのに、こんなにも違うのか。
竹山はどういうふうに出てくるだろう、と少し呆れながら俺も自分の席につきパソコンの電源をつけた。
太陽の光が爽やかで、暖房の着いていない寒い部屋をほんのり温めた。
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