28 / 34
第28話 花金2
店に入って2時間くらい経った。
ふたりとも酒がまわり、吉岡は竹山に絡み説教をし、竹山はことある事に俺に甘えるように絡んでくる。
「だーかーらー!お前は砂に甘えすぎなんだよ!」
「そうなんですか、砂川せんぱぁーい」
竹山は俺の腕をぶんぶん降りながらべそをかく。
あぁ、めんどくさい。
タバコに火をつけ軽くふかしながら竹山をなだめた。
竹山は思ったより酒に弱い。
1杯目をゆっくりゆっくり飲みほし、2杯目を3分の1飲んだくらいで顔が赤くなりわかりやすく酔い出した。酔っているのに吉岡が飲ませるのでもう今では完璧な酔っ払いだ。
「だから、甘えるなっての!お前は赤ちゃんだ、おいバブちゃん!俺がおしっこしてる間に俺のビールおかわりを注文しとけよ!」
そういうと、竹山の頭をぐしゃぐしゃに撫でてトイレに向かった。
頭を揺らされ酔いがさらにまわったのか、竹山はせんぱぁーいとテーブルに顔を伏せた。
しょうがないので、注文をしようとレオくんを呼ぶ。
「おまたせしました。」
レオくんが返事したのに、注文を取りに来たのは蒼井だった。
やっと蒼井の顔をじっくり見られた。俺は喜びを隠すように短くなったタバコを吸い煙を吐き出すと灰皿で揉み消した。
「ビール2つと水を3つ下さい。」
「かしこまりました。ところで、今日は全然酔ってないね。」
蒼井の仕事の顔が剥がれ落ち、柔らかい表情が見えた。
「いつもはこれくらいなの、あんなに酔ったのが珍しいから。2日連続なんて初めてだよ。」
「3回目も俺の前だけにしてね」
急に耳元で囁かれ、ゾクゾクっと身体が震えた。
動揺し蒼井をみたまま固まっていると、いたずらっ子みたいに笑って俺の肩をそっと撫でた。
「今日、仕事終わりに家行っていい?」
一気に酔いがまわった。酒なのか、蒼井になのかわからないが。
返事をする前に、おまたせー!っと吉岡が戻ってきて蒼井を見つけ嬉しそうに手を広げる。
「あーアオだー!俺に会いに来たの?」
と蒼井にハグをした吉岡。
本気で髪の毛をむしってやりたい衝動を必死に抑える。
「注文受けてたの!おい!ヨシキ酒くせーから抱きつくなよ」
「ひどー!なぁすなぁ~臭いって言われたー」
蒼井に押し戻された吉岡は笑いながら俺に抱きつく。
酔うと誰にでも抱きつく癖がある吉岡はこうなった時、怒るとすねるし甘えるしで、厄介なので軽く流そうとしたら不意に吉岡がいなくなった。
ん?と横を見ると蒼井が吉岡の首根っこを掴んでいる。
真顔になった蒼井はすぐに笑って、ハウス!!と乱暴に椅子に座らせた。
「…わん」
「まぁ落ち着け、先に水持ってくるから酔いを少しさましとけ」
蒼井は吉岡を睨みながらキッチンに戻った。
やっちゃったか、と俺に謝って酔い潰れた竹山の頭をポポポンと小刻みに叩いた。
小刻みに叩かれた竹山は、顔を伏せながら手をブンブンふって吉岡の手を弾いて、もーー!!っとうなっている。
酔っぱらい共を横目に、蒼井の事ばかり考えてる。
さっきのは嫉妬かな、触れられた肩が熱い。
嫉妬ならいいのにな。
「大丈夫ですか?」
いつの間にかレオくんがビールと水を持ってきてくれていた。
「あ!ごめん、大丈夫です。うるさくて申し訳ないです。」
「いやいや、いいんです。」
テーブルに全て置き、ごゆっくりっと帰っていく。
さて、この酔っ払い達をどうしたもんか。
吉岡はともかく、竹山はそろそろヤバイ。
「吉岡、そろそろお開きにしない?竹山やばいだろ」
「あー確かにな。これは送ってやんなきゃいけないレベルだな。めんどー」
また吉岡が竹山の頭をポポポポンと叩いた。
案の定、やーーー!と手をぶんぶん振り回している。だからやめろって・・・。
「しょうがない、俺が竹山のこと送るよ」
「いいよ、砂ここ最寄り駅だろ。俺、こいつと同じ駅で降りるし飲ませたの俺だし。」
吉岡はすっと、竹山をかかえおんぶした。
「え、今帰るの?」
「てか、会計は砂だからまだゆっくり飲んでな。」
にやっと吉岡が笑った。
「これ以上砂といちゃつくとアオに殺されそうな気がするんだよね」
吉岡は俺をからかって、じゃーなーと竹山をおぶりながら外に出て、タクシーっと大げさに手を挙げていた。
一人になって、飲みかけのビールをぐいぐいっと飲みほした。
あいつ、やっぱり禿げればいい!
レオ君と蒼井の視線を感じた、大丈夫。今日は俺が支払いますよ。
驚いた顔と、誘っているような色気のある顔。
俺は、また酔いそうだ、酒ではなく蒼井の色気に。
ともだちにシェアしよう!