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第8話

「タクミ・・・」 「義一様・・・」 「ここに来て、幸せか?」 「はい、皆・・・優しく、大切にしてくれます。」 「それならいい・・・もっと早くに連れて来るべきだった・・・」 「義一様・・・」 「タクミ・・・俺に、お前の全てを委ねてくれないか・・・ そこの鏡を見てごらん・・・何か見えるか?」 「鏡ですか?」 「あぁ、お前の瞳には何が見える?」 僕は義一様に言われるがままに、その場にあった鏡を見た。 鏡面は白く濁り等で何も写しそうに無い。 しばらく覗き込んでいるとパッと鏡面が透明に透き通り僕の家族を映し出した。 家族と呼べるのかわからない・・・ 兄だけを溺愛し、僕を売った。 そのお陰で、兄の呪縛から逃れてきたのだ。 ハッと我に帰り義一様を振り返った。 「やはり見えるか・・・」 「はい、両親が・・・」 「そうか、琥珀と翡翠が懐いていたからもしやと思うてな・・・タクミ・・・」 「琥珀と翡翠ーーー普通は見えないのですか?」 「あぁ、普通の人間には見えない。我が一族の長に使えていた狛犬だからな・・・」 「狛犬?」 「あぁ、大きな犬よ」 「では、私も義一様の花嫁と認めて受け入れてもらえたのですね・・・琥珀と翡翠に・・・」 「そのようだ(笑)」 義一様の笑顔が眩しかった。

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