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第9話
僕の両親は兄だけを愛し、僕の存在はどうでもよかったのだ。
どんな両親でも親だと思っていたのに、あの日僕を売ったのは紛れもなく実の両親だった。
体の弱かった兄の薬代の為に僕は売られたのだ。
それからは地獄のような日々の中、生きてきた。
それを思うと義一様の元に嫁ぎ、「鬼の花嫁」としての暮らしは、天国にいるかのようだった。
そして今日・・・
義一様の真の花嫁になる為にここに連れられてきた。
屋敷の奥にこんな社があるなど誰が想像できただろう。
琥珀と翡翠・・・
この社を守る狛犬・・・
不思議なことだらけなのに、僕はすんなりと受け入れていた。
「タクミ・・おいで・・・・」
「義一様・・・」
「俺に抱かれるのは怖いか?」
「いいえ・・・・」
義一様に手を引かれ奥の寝所へと誘われた。
怖くないわけではない。
ただ、義一様に嫌われたくはなかった。
今までの浅ましい自分を知られてしまうのが怖かった。
たぶん、そんな姿も義一様は見ていたのかもしれないけれど・・・
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