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第15話
ふと気付くと、義一様の姿がない。
不意に不安が胸の中で広がる。
あんなに安心して全てを預けたことがあっただろうか・・・
姿が見えないだけで、こんなにも不安な気持ちになるのだと初めて知った。
確かに愛された後はここにあるのに、この不安は何だろう。
それをかき消すように現れた琥珀と翡翠。
僕のそばに優しく寄り添う二匹の狛犬達に安堵した。
「ありがとう、琥珀、翡翠」
僕は名を呼び頭を撫でると、二匹は嬉しそうに尻尾をブンブンと振った。
二匹は僕を守るようにして眠った。
そのうち僕も二匹の温もりに抱かれながら眠りに落ちた。
そんな僕らを、戻って来た義一様が優しく見つめていたなんて、僕は知らなかった。
部屋の行灯の明かりの下、煙管片手に少し離れた所に義一様はいた。
「いらしたのですね」
「眠れたか?」
「はい」
「少し離れた間に、此奴らタクミを取りおって・・・」
「妬いてるのですか(笑)」
「あぁ、タクミは俺のものだろう」
「はい、義一様」
そんな会話をして僕に手招きをする義一様の姿が嬉しかった。
僕は義一様のもの。
何があっても離れたりはしません。
僕は貴方の花嫁だから・・・
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