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第2話
「―…ねえねぇ、テュラはさ、こっちとこっちのエプロン、どちらが良いと思う?」
「…え…」
何故それを俺に聞く? 俺の心を無邪気な笑顔で抉るなー!
そして見せられたのは繊細なレースがふんだんに使われたシルクの白いエプロンと、シンプルだけど製法が確りとして左端にワンポイントがある白いもの…
「俺はこっちのシンプルな方が良いと思う…かな?」
「ふぅん?」
よし! 答えたぞ!
「んじゃ、今夜はテュラが選んだこっちにしようかな!」
「え…」
"ヒラリ"と細い腰に俺の選んだエプロンを着けて後ろでリボン結びを作り、エルンは薄い翅を僅かに動かし足取り軽く扉に向かった。
…夜この時間に部屋の外…エプロン、とくれば余程の新人でない限り、察しが付くってもんだ。
しかもエルンは成人している。その証拠にズボンは"黒のスラックス"だ。
俺はまだ未成年だから、黒の膝丈ズボンにハイソックスなんだけど…。まぁ、使用人の世界では普通な事だし、相手の年が単に見分けられて便利だ。
…それにしても、今夜…エルンは御主人様に呼ばれ、部屋に行くんだ。
俺に「夜は危険だから、ちゃんと鍵を掛けて寝るよーに!」と忠告を残し、出て行った。
―カチャ…
「…鍵、よーし」
早々に鍵を掛け、無意味な声だし確認。
どうせ何も起きないよ。
俺はこの屋敷の唯一成人していない、一番下っ端の薄翅族の使用人。エルンの相棒。二人部屋の片割れ。
この程度の認識だ。
あ。『二人部屋の片割れ』ってのは、使用人と言えども大体一人部屋を与えられる中で、何でか俺は長年エルンと二人部屋なんだ。
エルンが成人したら分けられると考えていたんだけど、結局一緒だし…。
まぁ、一応仕切りも有るし別にもう慣れてしまったからあまり気にしてないけどさ。
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