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第5話
そして迎えた成人の日…ご主人様に呼ばれ、俺は初めて部屋に呼ばれた。
「…テュラ。新しいエプロンをやろう。今日はお前の…成人の日だろう?」
「え!? …あ、はい」
そして渡された新しいエプロンと。黒のスラックス。
「ぴったりだ…」
フリルは無いが装飾的なものは前掛けの端の方にある、御主人様の家紋のみの真っ白いエプロンだけど、俺にぴったりの大きさ。
シンプルなのが好みだし、俺が好む生地で製法にこだわりを感じる。正直、嬉しい。
「…気に入ったか?」
「はい! とても気に入りました!」
「そうか…受け取ってくれるか」
「はい、勿論です。御主人様、ありがとう御座います」
うわ。俺の言葉に御主人様の笑みが深く…優しい笑顔…。鼻血出そう。
「では、テュラ、お前を使用人から外す」
「え?」
「明日から、お前は俺の"使用人"では無い。一週間以内に部屋の荷物を纏めておけ。これは決定事項だ」
急に氷塊入りの冷水を頭から浴びせられた気分だ。
見えない氷が当たって、痛い…。
でも、黙っているのは不自然だろうと俺は何とか喋り出した。
「―…あの、俺…その、素敵なエプロン、ありがとうございました」
「ああ。俺が素材から選んだんだ。気に入ってくれた様で良かった。これでお前がどんな存在か、一目で分かる」
そ、そうか…。この上等な新しいエプロンは、"餞別"、なんですね?
家紋入りなのは、他の就職先でここで働いていた事を示せるアイテムに使え、と?
「それで…。受けてくれるか」
「…はい」
俺の言葉に御主人様の表情はとても穏やかで…そこまで安堵している姿を見た時、俺の中の"想い"が崩れ始めた。
―…ああ。もう、ここには居たくない。
心の拒否反応。
朝なんか、来なければ良いのに…。
ずっとエルンのエプロンを羨ましく思いながら、御主人様への恋慕を隠して只の使用人の一人として生活する。
エルンが居ない時は代わりを務め、恋慕とは別の一生明かさない"秘密"を胸に収めた。
この屋敷で何も望まないで、極夜の様な真っ暗な暗闇の中でもがく様に歩いてくつもりだった。
でも、"使用人"として、不必要だと言われて…。
俺は…俺は…
自分の何がいけなかったのだろう…?
「……」
成人と認められた後の翌朝、御主人様の屋敷で俺は希望に満ちてスラックスを穿き始める。
そう、ずっと考えていた。でも、現実は…
「…解雇」
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