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[きぬ]アホ男子な僕たち(2)
じゃあさ、綿貫はこれも知らないのかな?
「熱中症ってゆっくり言ってみ?」
「え?熱中症?」
こんなの全国的に知れ渡ったネタだよな。高野はニヤニヤ笑いながら経過を見守っている。綿貫はおそるおそる口を開く。
「ねっ、ち、ゅ、う、し、よ、う……」
言い終わる前に背後に回った僕は、綿貫の両肩に手を乗せ、グッと力を入れて背後を取った。
「え? なに? 綿貫、チューしたいの?」
高野が笑いながら被せて言う。
「『チュウしよう』だって! タヌキ、やーらしーっ!」
呆気に取られて綿貫はもごもご「ねっ ち ゅ う し ょ う…」と反復している。……て、お前耳まで真っ赤じゃんか。湯気でも出しそうな綿貫の後頭部にわざと頬を寄せ、笑いを堪えながらお決まりのやり取りを続ける。
「嫌ならしないよ? 嫌がることはしないのが友達だろ?」
会心の一撃。僕のダメ押し技、耳元での囁きで綿貫は蒸かしたての中華まんみたいに膨れて湯気を出している。初心い奴め。これじゃあアホ男子たちの恰好のカモだ。必死な顔で絞りだした言い返しに、高野が追い打ちをかける。
「な、なんでこんな大勢の前でキスしなきゃなんないんだ!」
「じゃ、隠れて密室でするの?
ま、密室でキスなんかするのは友達じゃあないだろうなあ」
「ともだちじゃ……ない?」
狼狽えて子供のような言い方で綿貫が呟く。かっわいいなあ、綿貫。そんなに怯えるなよ。心細そうな声に釣られて、背後から肩を掴んでいた両手を緩め、そのまま腕を巻き付けて綿貫の身体を抱き寄せた。
「ホントにしてみる? キス……」
「き……」
綿貫の思考回路がショートした模様です。再起動まで今しばらくお待ちください。
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