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[木綿]フリーハグ-2-
衣笠へと続く並びは結構伸びて、現在15人程度。最後尾に俺がつくと、すぐ後ろに島先輩がくっついてきた。
「島さん、何してんすか」
「何って、並んでるんだよ。フリーハグだ、文句言うなよ。
お前こそ、何で並んでるんだよ。ハグぐらいで目クジラ立ててんの? かっわいい―――♪」
……ああ、そうか、島さんは俺等が交際中のカップルだと思ってくれてたのか。
ホントに恋人だって言える立場なら、ハグ部でも許せるのか? 日本男児としては、自分のパートナーが他所の奴と触れ合うなんて、軽いハグだって気が気じゃないと思うんだが。
現状、正確には所有権を主張できない立場の俺は、止めに入るわけにもいかず、おとなしくハグ待ちの列に並んでいるのが精一杯。だが、その真相は島さんに言えない。
相変わらず多国籍の学生達だが、今日はいつもより日本人多め、女子率の高い列が続く。衣笠の顔は知れ渡っているので、どさくさ紛れに近付こうとするミーハーも多い。衣笠はマスクをつけたままながらも、声を掛けられればきちんと受け答えをし、軽いハグをして上手くさばいていく。人が好きで、英語が得意なコイツには楽しいのかも知れない。
「よ。」
「なんだよ! 綿貫か」
お決まりの動作で、一瞬だけのハグ。
ほんの2秒で島さんに移る。そして次々と順番が進む。ベルトコンベアに運ばれる物のように機械的な動きなのに、笑顔になった人達が食堂へ、中庭へと散り散り流れていく。
……考えが甘かった。
皆には、日常の一コマ。昼休みのスパイスだろう。
―――俺的には心臓が止まりそうな劇薬だった。
『うっっっわあああああ、至近距離すぎるだろ? コレ……』
悟られない程度に腰が砕けた。
一番近いベンチにぺシャリとしゃがみ込み、長蛇の列の先頭で笑顔を振り撒く衣笠を遠巻きに見つめながら深呼吸を繰り返した。
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