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[きぬ]12月24日-1-
「ま、なんにせよ、俺的にはお前らが現状維持のままだったお陰で助かったよ。」
高野はいそいそとタイムカードを押す。
恋人と同じ寮に住んでいるんだから、一緒に出掛けたらいいのに。なんでもケンちゃんが駅前で待ち合わせて出掛けたいと言い出したとかで、日曜日のバイトのシフトを高野と交換したのだ。だから、早番だった高野が14時で退勤。
「ここんとこ、衣笠がポー――っとしてっから、お前らに何かあったのかと思ったよ。」
……ぎくり。
「綿貫とお前が急に盛り上がっちゃって、やっぱりバイト休みますぅ、なんて言い出したらさ、俺達の初めてのクリスマスデートのプランが台無しじゃないか! フられちゃったらどうしてくれるんだよぉ」
泣き真似はやめてくれ。実際なんの変りもなくクリスマスを迎えてるんだから、高野に迷惑はかけていないじゃないか。
「前々から頼まれていたんだ、その辺の事情は分かってるって。」
だから、今夜の遅番と、明日は終日、僕がしっかり働く。サンタ帽だって被ってやるよ。
事前に上司に変更を申し出たら、「クリスマスなのに独りなのか? 従業員宿舎のパーティあるけど、衣笠君も参加するか?」と、帰らなくてもいいように一部屋手配してくれたけれど、今夜は寮に帰ろうと思う。
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