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[きぬ]経済格差とスーツ-2-

 翌朝。一人では朝食を摂るのすら面倒で、実家でいろいろ持たされた土産物を抱えてバスに乗り込んだ。今日はバイトのシフトは入れていないから、従業員出入り口から入るのはおかしい。開店にはまだ少し早いけれど、海側のドアを押してみる。  カランコロンとカウベルが鳴る。扉の隙間からおずおずと店内を伺うと、高野が仕上げのモップをかけているところだった。 「衣笠!あけおめ、おかえり。今日からシフト入れるの?」 「え? お土産配りに来たんだけど、なに?人手足りないの?」 「……マスターが発熱。昨日早退、本日不明!」  ありゃりゃ~……。いきなり入って良いのかな? いいよ、暇だし。着替えてくるよ。  賄いの朝飯は、正月モード、というか、余り物リサイクルメニュー?  栗きんとんとバターが挟まっているドックパン。白菜のスープはハムと蒲鉾が入っている。 あんバターコッペパンが好きな人なら抵抗はないはず。まあまあ美味い。……癖になってまた食べたくなっても、栗きんとんが手に入るとは限らない。もう会えないいかも知れない切ないメニューだ。  冬休みももうすぐ終わる。ホテルの宿泊客の中には、大学生らしいグループもちらほら。そういえばうちの大学って、旅行に行こうよって誘いが無いな。自分たちがもてなす側で働いているから、長期休みは書き入れ時で休む時ではない。こんな繁忙期に穴をあける訳にいかないから、今はしっかり資金を貯めて、いつか一流旅館のもてなしを受けに行きたいなあ。  海外にも行きたいし。修学旅行でパスポートは作ってあるから、予定さえ立てればいつだって行けるなあ。  ……綿貫は英語圏は嫌がるだろうな。あいつの選択クラスは日本語オンリーの集まりだから。  そもそも、何のアルバイトもしてない綿貫は、旅行に誘ったら困るんじゃないだろうか? 親の金を頼ったりはしなさそうだ。せっかく行くのに無理して付き合わせるのでは申し訳ない。気を使わずにのびのび過ごしたいよな。んーーーー、綿貫と一緒に海外に行くのは難しいかなぁ。

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