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[きぬ]経済格差とスーツ-4-

 学生グループは、チェックインの始まる午後三時ちょうどに現れた引率の教授に連れられてホテルへ移動した。  休憩時間に綿貫にメッセージを送って見たけれど返信は無く、モヤモヤと気持ちが晴れないまままた仕事に戻った。  高野は自分の眉間に人差し指を指し示すと、 「衣笠、ココ、溝出来てる。マリアナ海溝並みの強烈なやつ」  と、一緒になって眉間にしわを寄せた。  連絡が取れたところで、先程の聞きかじった内容を直接ぶつけるわけにはいかないだろう。どうせ結論が出ないのならば、別人のことと思うか、聞かなかったことにするのはどうか、と。高野の言い分もごもっともだ。 「俺の知ってるタヌキは違うタイプだからさ。繋いで考えられない。そうだろ?」 「そだね。僕の知ってる綿貫は、お節介な筋肉バカで、年がら年中学内寮に引き篭もってるトレーニングオタクだ。」  自分の身体を堕とし込んで何かを手に入れる男ではない。広く浅く人脈があるし、先輩達から聞きつけた近所の穴場情報に詳しくて、思い立ったらすぐ動いてみるヤツだ。僕をダシに日焼けスポットやら美味いものやら引き回すお節介なヤツだ。……あれだって、見せないだけで周到に準備しているのだろう。手順、道順に迷いがないのはきっと、事前に下見に行ったりしているのだ。マメな芝犬……。まめしば? いやそうじゃなくて!  寮の大掃除をひとりで済ませてしまうほどの忠犬……いや、だから犬じゃなくて!

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